カカオ72% Part 5

カタチ。 24 -side 2- ページ7

衝撃だった。

見かけた可愛い子が
自分の好きな子とか。

最近はAちゃんの部屋着かか家でwebで仕事してる姿しか見てないから
外でどんな格好してるとか知らなくて。

あんなに足を出してるとか知らなかった。



嫌だった。

Aちゃんが自分の知らないところで
可愛い格好をしてるとか。

最低なのは分かってる。
勝手に縛ってることも分かってる。

けど本当に嫌だった。



腹が立った。

帰ってしばらくしても来ないAちゃんにもイライラしたし
やっとうちに来たAちゃんが

「似合う？」

って回ってスカートが少しヒラッとしたのも腹立った。



何してんの？



だから

「全っっ然」

間を空けずに言った。



途端に目を丸くして俺を見るAちゃんは

「え、……ダメ？」

驚いたまま聞いてくるから答える。

「全然、似合ってない」

嘘。
似合ってない訳じゃない。
むしろめちゃくちゃ可愛いけど
そんな格好で外をウロウロしないでよ。



いっぱいに開かれたAちゃんの目に涙が溜まったタイミングで

「ごめん、今日は帰る」

パサッと音を立てて玄関に袋を置いてAちゃんが俺に背を向けた。
そのままドアが開いて
勢いをつけずにAちゃんがドアを閉める。



Aちゃんが置いた袋の中には
この前に絶賛したお魚屋さんの刺身と
さっき会ったスーパーで買ったであろう俺が好きな惣菜。


………ごめん、Aちゃん。

でも、あのままうちに来られても多分ものすごく態度悪かったと思うんだ。



俺の誕生日はものすごくお祝いしてもらったのに
最悪の誕生日にしちゃった。

最低だ。



Aちゃんが帰る頃にミツにLINEを送っておく。

ミツは今日遅くまで仕事だった。
仕事が終わる頃に『ちゃんと帰ってるよ』ってLINEが来る。

良かった、うちに居るんだ。



言い過ぎた、って謝るのもそれならそもそも言うなって話だし
せっかくのAちゃんの誕生日も次の日も
お祝いの言葉すら言わなかった。



休み明けに楽屋でメンバーに会ったけど
ミツは相変わらずいつも通りで
バッチリ目が合ったタマが何かを言いかけて口を閉じた。



「え、何？」

「ん？昨日休みだったし元気かなーって」

「……元気だよ」

「そっかー」



ニコッて笑うタマは

「みやっちー、明日のゲームの仕事さぁー」

何も言わずに離れていく。




…………何だよ、ミツもタマも。





分かってるよ、自分が悪いことくらい。



でも、どーーしても嫌だったんだもん。

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