カカオ72% Part 5

last wall 20 -side T- ページ48

俊くんの何気ない一言で
Aちゃんが行方不明なのが分かった。

青ざめてる俊くんと
青ざめてるのを隠してるミツ。



そして

「本番でーす！」

スタッフさんからの声に

「はい」

1番最初にリアクションして立ち上がったのはミツ。



「え、キタミツ電話する時間くらい……」

俊くんが言うけど

「大丈夫だろ。つーかほっときゃいいよ。勝手に出てったんだし」

ミツが先に部屋を出ていく。



取り残された俊くんと
何となく雰囲気でただならぬ雰囲気を感じてる千ちゃんやガヤやワタが戸惑ってるけど。




「大丈夫だよ」



ニカが俊くんや皆に言って

「Aちゃんならミツを心配させても悲しませるような事はしないと思う」

本当は連絡しようとしてたのか手にしてたスマホもカバンにしまって

「ほら、行こ。スタッフさんたち待ってるし」

俊くんの背中を押して出口へ向かう。



確かにそう思う。

けどミツからじゃなくてニカから言われるのは少し嫌、って気持ちが3割
ニカがそう言うならそうだな、って思うのが7割。



いよいよ気持ちの整理ついてきたかも。



黙ってついていく俺に
ガヤたちも続いてくれる。



廊下に出るとミツの背中はだいぶ遠くなってて

「キタミツー」

俊くんが慌てて追いかけてて
バランスを見る他のメンバーも続いてて。



俺も続こうとしたら

「タマ」

ニカに呼ばれる。

「後でさ、タマがAちゃんに紹介した美容師さんに連絡取れない？」

皆には聞こえない声量で言うニカ。



「あ……！」



確かに。
マキちゃんならミツから逃げる逃げ場に最適だ。
ニカだとミツと連絡したら一発だもん。

マキちゃんとAちゃんの仲なら
もしかしたら一緒に居るかも。

すごいなニカ。

全然考えもしなかった。



「分かった、連絡してみる」

「ありがと」



ホッとした顔のニカに

「一緒に居るとは限らないよ？」

「うん。もちろん、居たらいいな、ってくらいだから」

明るい口調で寂しそうに笑う。



そりゃそーだよね。
Aちゃんは家出した事をニカにも連絡して無いんだし
その家出先が自分の所じゃないんだもんね。



「ニカだとすぐミツに言うもんね」

「そりゃ、心配してるだろうからね」



困った顔で笑うニカは

「あの2人の喧嘩は周りを巻き込みすぎなの。でも結局、お互い大好きなんだよね」

俺でも無理に笑ってるのが分かるくらい。




ニカは2人の事が大好きだからどっちにも怒れなくて
余計辛いだろうな、って思う。

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