カカオ72% Part 5

last wall 13 -side Ki- ページ41

「にぃーー」

「んー？」

「夕飯何がいいー？」

「んーー、何でもいいーー」

「えー、また？」



今日は久しぶりにAと夕飯を食う約束をしてて。

出かける前にコーヒー飲んでると
Aが夕飯を聞いてくるのに反応してたらAがあからさまに嫌そうな声を出す。



「最近そればっかじゃん。困るんだけど」

「何でだよ、好きなモン作りゃいいだろーが。Aが食いたいもん作れよ」

「私が食べたいもの、お昼に作るもん。夜はにぃが食べたいもの作りたいの！」

「はぁ？しらねーよ。朝メシ食いながら夕飯の事とか分かるかよ！」



何だか今日はイライラしててついAにキツく当たると
Aは顔まで嫌な顔をする。



「何その言い方」

「Aこそ何だよ、いつもいつも夕飯聞いてきてさ。Aが好きなモン作りゃいーだろーが。毎回聞かれるこっちの身にもなれよ」



いま何が食いたいかなんて夜にならねーと分かんねーよ。

毎回食いたいもの決まってる訳じゃねーし。



「……え、そんな風に思ってたの？」

「は？」

「にぃが喜ぶと思って、にぃが食べたいもの作ろうと思ってたのに」



Aがみるみる泣きそうな顔をしてるのは分かるけど
今から仕事で出かけるっつー時にそんな顔されても正直めんどくさい。

フォローする時間より
仕事への気持ち作る時間の方がほしい。



「そんなに作るモンに困るなら今日食って帰ってくる」



このままここに居たらA泣くか
Aがブチ切れてさらに喧嘩になるかどっちかだ。

どっちにしても仕事前は嫌だ。
でも

「………」

無言で俺を見るAがすげー泣きそうになってるけど。

マジで今はめんどくさい。
コーヒーを置いてリビングを出ると寝室に逃げ込んだ。



少しして迎えの時間になったから下に降りるか、と思ってふと気づくと
仕事のカバン、リビングだ。



顔合わせたくねーな、と思いつつもリビングに行くと
Aは居なくて。

ホッとして玄関に向かったら
バスルームから洗濯カゴを持って出てきたAと鉢合わせする。



Aが何かを言いかけて口を開いたから
それが文句だとめんどくせーな、と思って

「……」

Aから顔を背けて靴を履くとそのまま家を出た。



片っ端からLINEしてメシを食う奴を見つけて
日付が変わる頃に帰ると家は真っ暗で。

寝室にもリビングにもいないAの部屋だけ明るい。



勝手にしろ。



声も掛けずに寝たその日から
Aと顔を合わせなくなった。

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