カカオ72% Part 5

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Aちゃんとの日々は
とても落ち着く。



仕事でヘロヘロになって帰ると
リビングに明かり。

あ、今日来るって言ってたな、って思いながらシャワーを浴びてリビングに行くと

「おかえりー」

明るく迎えてくれるAちゃん。
ただ、さすがに今日は疲れ過ぎてたから

「うん」

としか答えられなくて。



それに気づかないAちゃんじゃないから
何も言わずに炭酸割りを作ってくれてその場で切ったレモンを乗せて

「これね、近所の八百屋さんに売ってた無農薬のレモンなの。美味しいよ」

ニコッて笑って

「お仕事、お疲れ様」

少し背伸びして頭を撫でてくれちゃう。



うわ、ヤバ。

ときめく。



それだけ言って離れようとするAちゃんに
何も言わずに引き寄せて抱きついたら

「………」

ぽん、ぽん、って黙って一定のリズムで背中をぽんぽんしてくれるAちゃん。



あぁー、癒される。

疲れてギスギスしてた気持ちが
スーッて溶けてく感じ。



「ありがと」

ちっちゃい声で言うと

「んーん、いつも私の方がニカに元気にしてもらってるから」

背中をぽんぽんしてくれてるままで言うAちゃんの声が優しい。



Aちゃんがココに居てくれてるっていう存在がデカ過ぎる。

毎日こうしてココに居てくれてもいい。
初めて思った。



チュッって触れるだけのキスをしたら
未だに照れてはにかむAちゃんの笑顔が可愛くて。

あぁ、ダメだ。

好きになり過ぎてる、って思う。



「飲む？」

「ん」



腕を解いてカウンターに並ぶとAちゃんも自分のお酒を作るから
グラスを合わせて乾杯して2人で飲む。

特に何か会話をするでもなく
お互いテレビを見たままぼーっとしてて。

その沈黙が嫌じゃない。
それがまたいい。



飲み終わる頃に

「ニカ、おかわりは？」

たった数十分なのに
すごく久しぶりにAちゃんの声を聞いた気がする。



『ニカ』って名前がAちゃんの口から発せられるだけで
特別な名前な気がしちゃう。



「Aちゃんは？」

もう一杯飲もうな、って思ってたら

「んー、ニカが飲むならもう一杯」

俺を見上げて笑うAちゃんが愛しくて。



「じゃあ、おかわり」

「はーい」



2人分作るAちゃんを邪魔にならないように後ろから抱き締めてると

「ふふふっ」

嬉しそうにAちゃんが笑う。
それが嬉しくて

「ふふっ」

俺も笑ってなんだか幸せで。



Aちゃんの事が好き過ぎてる
自分が怖い。

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