カカオ72% Part 5

last wall 10 -side You- ページ38

今日はニカの家に泊まりに行く。

その直前の仕事が最悪で
webミーティング相手の担当の男の人が感じ悪くて
理不尽なクレームつけてきたと思ったら
いつもより体のラインが出る服を着てて胸元まで画面に映している私に

「Aさんって意外とスタイルいいんですね」

とか鼻の下伸ばしながら言ってきた。



『意外と』って何よっ！

腹立つ腹立つ腹立つーー！！



せっかくニカに会うのに
こんなに嫌な思い引きずったまま行くのは嫌だったけど
その打ち合わせが長引いてニカのところに行くのがギリギリになっちゃった。

ニカんちでシャワーを浴びてリビングに行くと

「いらっしゃい」

ニカはニコッて笑って迎えてくれる。
それだけで嬉しくて泣きそうになったら

「ん？」

小首を傾げて私の顔をじーっと見たニカは
黙って両腕を広げた。



「え、何？」

「何、って、Aちゃんか何だか疲れてそうたから」



気づいてくれたんだ。

優しい笑顔のニカに泣きそうになって
何も言わずに飛び込んだ。

しっかり受け止めてくれるニカは何も聞かずに
ぽんぽん、って背中を一定のリズムで優しく叩く。

あぁ、癒される。



だから、ぽつりぽつりと話した。

さっき起きた嫌だった事を。



ニカは

「そっかぁ」

って頭をなでなでしてくれて

「偉かったね」

優しい声で言う。



うわ、キュンキュンする。



「うんっ」

ギュッ、ってニカにしがみつくと

「じゃあ今日は残りの時間、たくさん笑おうね」

同じくらいの強さで抱き締めてくれて
キツすぎないけどギュッとされてるのが何だかホッとする。



「ありがとう、ニカ。元気出た」

「そう？なら良かった」



腕を解くとニカも解いて

「じゃ、ご飯食べて飲もっか。あとね、Aちゃんがこの映画面白そうって言ってじゃん？だから借りたんだ」

そのタイトルが私も見たかったやつだった。
何かの話の流れからニカに話したことあるけどサラッとしか話してないのに
まさか覚えててくれたなんて！

「え！」

「Aちゃんから話聞いて面白そうだなーって思って」

私が喜ぶことをニコニコして話すニカが愛しくて
また抱きついた。



「ニカのお陰で嫌だった気持ち、吹っ飛んだ」

「ホント？さすが俺だねー」



ニカもギュッて抱き締めてくれるから嬉しくて
にぃも大切だけどニカの気持ちが嬉し過ぎて好きな気持ちが溢れて止まらない。



「大好きっ」

「何もしてないよ？」

「充分」



ニカが居てくれればそれだけでいい。

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