カカオ72% Part 5

カタチ。 44 -side 2- ページ27

「ただいま」

ライブが終わった日に家に帰ると

「やっほーニカ」

Aちゃんがキッチンで何かを作ってる。



「ライブ完走お疲れ様。これお祝いの焼酎」

「うわ、ありがとうー」

「DVD出るの楽しみにしてるね。生で見れなくて悔しいけど！」

「あはは、こればっかりは運だしね」



いい焼酎を俺に向けて掲げてお刺身を冷蔵庫から出してくれたAちゃんは
ホンワカした雰囲気で。



「……まさか先に飲んだ」

「シャワーの後にビール1本だけね」

「うわ、ずるっ」

「私も今日大きな案件1つ片付いたトコなの」



ニコニコしてるAちゃんに

「ん」

手にしてたケーキの箱を渡す。



「………なに？これ」

「ケーキ。これ実は誕生日に買ったのと同じやつなの」

「え！！」



目を丸くして俺を見上げるAちゃんは

「うわ！びっくり！」

「誕生日、最低な事言っちゃったから。打ち上げならいっそ俺からもAちゃんをお祝い、って思って」

「えー！嬉しい！甘いもの食べたかった！！」

花が咲いたみたいに笑うから。



『嬉しい』を全力で表現するAちゃんが可愛くて

「ふふふ、可愛い」

素直に言うと

「誕生日の日に聞きたかったなー」

口を尖らせて、でもどこか嬉しそうに言うAちゃんの顔がミツそっくり。



「うわ出た、あざと顔」

「失礼しちゃう。あざとくなんかないもん」

「ほらこの口っ」



むにっ、とAちゃんの口を摘むと
その柔らかい感触にまたドキッとした。



「はにゃして(離して)」

「ふふふふふ、ヤバ、激カワ」

「むー！怒るよ！」



手を離すと俺を見上げて

「ね、私、可愛いの？」

「さっきのムスッとした顔は可愛くない」

「…あっそ」

ムスッとしたままのAちゃんが面白くて笑うと

「もうっ！私、怒ってるんだけど！」

Aちゃんが絵に描いたように怒るからまた笑っちゃう。



あーもう、ものすごく楽しい。

ライブでテンション上がってるのもあるけど
心地いい疲れと出まくってたアドレナリンがいい感じに落ち着いてきてるのが分かる。



「ね、飲もーよ」

「………」

「ごめんね、笑いすぎだよね」

「………」



ムスーッとしてるAちゃんに

「ホントは全部可愛いって思ってるよ」

言って頭を撫でたらみるみる笑顔になるから。



あーもう、ホント可愛い。



「ね、飲もっ」

「…うんっ」

笑顔のまま頷くAちゃんが愛しくて。



Aちゃんと過ごす日々を
大切にしたい。

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