カカオ72% Part 5

カタチ。 38 -side You- ページ21

「あっっりえないっ」

ニカが腹の底から気持ちを込めて言う。



「人の話聞いてないとかどーゆー事っ！？」



ものすごくニカが怒ってる。

そりゃそうだろう。
ドアも開けなきゃ話を聞いてないとか
私は相当最低な事をしてる。



でも性格が悪い私は

「聞くなんて言ってないもん」

「はぁ！？」

自分でも引くくらいひねくれた返しをするからニカがまた怒る。



少しして、はぁーっ、てニカは大きくため息をつく。



あ、いよいよ嫌われたな、って思ってたら

「開けるよ」

私が『いい』って言う前に部屋のドアを開けた。



だめだよ、顔ぐちゃぐちゃなのに、って止める間もなく開いたドアの前に居たニカは
私の顔を見て笑って

「すんごい顔っ」

腕を広げると私を抱き締めた。



久しぶりにニカの腕の中。

温かいし大好きなニカの香りに包まれたら自然に涙が溢れる。



「好き」



ニカが言う。



「Aちゃんが、好き」

ちょっと照れた声で言うニカは

「先の事とか約束出来ないけど、俺が好きなのはAちゃんだけだし、きっとAちゃん以外好きにならない」

ぎゅぅ、って少し痛いくらい私を抱き締める。



「短い髪も、この前の服も、めっちゃ似合ってた。あんなカッコで外歩いて欲しくなくて嘘ついた」

意外な事を言うニカに

「……ニカが、短い髪がいいって言うから切ったの」

つられるように本音を言うと

「え？言ったっけ？」

ニカのテレビでのリップサービスなんだって分かったら
何で髪が切っちゃったんだろう、って思う。



「………もう切らない」

「どっちでもいいよ、Aちゃんなら」



びっくりするくらい甘いことを言うニカは

「それより、もう他の男と出かけてほしくない」

なんて言うからピンと来ない。



「男の人？」

「……髪短くて、スラッとしてて。だいぶ前に駅前で待ち合わせしてたよね」



記憶を辿ると思い出したのは

「あぁ、マキちゃんか。女の子だよ」

「え！？」

驚いて腕を解いて私を見るニカはまた私を抱きしめて

「なぁんだー、良かったぁ」

心底ホッとした声で言う。



マキちゃんに妬くとか
ニカって本当に私の事好きなんだ。



「男の人と出かけたりしないよ」

「ホント？外で一緒に歩いたりしたくない？」

「うん。家の中でいい。私、家で過ごすプロだし」

「あはは、そっか」



ニカが嬉しそうに笑うから私も笑う。

そんな私の顔を見てニカも嬉しそうだったから私も言った。




「私も、ニカが好き」

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