カカオ72% Part 5

カタチ。 32 -side Ki- ページ15

Aに申し訳ないことしちゃった。

動画の編集って言ったら
Aがいつもやってんな、と思ったら
ついAを提案した。



タマや宮っち居るしニカだって居るから問題ねーだろうし
Aがニカと全然会えてない理由がイマイチ分からないけど
もしAがニカと会いたくないなら断るかな、って。

でもAは「いいよ」って即答したし
来てくれた時にニカを見る目が一瞬だけ恋する女の目。

仕事になったらすぐ切り替えてたけど。



それにしても編集を終えて帰る時のニカの態度。

ある程度は仕方ないとは思う。
とは言えあんな目して逸らすことあるか？

さすがにムカついた。



案の定、Aは悲しい顔をするし
一瞬泣きかけるから変な空気になり掛けたし。

みんなの前では我慢して
エレベーターに乗った途端泣いたAが可哀想で。



ごめん、俺のせいで。



エレベーターが下に着いた時に涙を拭うAは俺から離れると
ドアが開くまでに笑って

「それじゃあ、また」

誰が見てるか分からないから友達のフリになる。



「ん、本当にサンキュ。また」

「うん」

「帰り、分かるか？」

「大丈夫、スマホあれば何とかなるから」



無理に笑うAが見てて切ない。
マジで申し訳ないことしたな、って思ってたら

「あとさ、これ。ニカに渡して」

Aが渡してきたキーケースは多分ニカんちの鍵。



「ちょっ、Aっ」



声を掛けても振り返らねーAを見送って皆のところに戻ると
何事も無かったように動画の話は終わってて
ライブの打ち合わせや今後の仕事の打ち合わせになってる。

ニカは全くこっちを見ないし
それがまたイラつかせたけど。

俺より機嫌が悪いのが
怒った顔をしてるタマだった。
宮っちですら話し掛けられない雰囲気。



雰囲気悪っ、と思ってたけど
とりあえず打ち合わせはしねーと。

ニカもタマも大人だから
意見出し合う時はちゃんと出し合ってて

「じゃあそんな感じかな。これで今日の打ち合わせは終了で」

「「「「「「「お疲れ様でしたー」」」」」」」

スタッフさんの号令で打ち合わせが終わると
ソッコーで部屋を出るニカの背中をしばらく見送ったタマが
追うように椅子を立つ。



タマの顔が怖いまただからやべーかな。
ドアまで追いかけて

「タマ」

声を掛けたら

「…最初で最後にするから、一言だけ言わせて」

ボソッと呟いて部屋を後にした。



パタン、と閉められたドア。



…………ここはタマに任せようかな。

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