カカオ72% Part 5

カタチ。 31 -side You- ページ14

ニカと久しぶりに会った。

当然、にぃを除いたらニカどころか誰とも
初対面のフリをして。

久しぶりに会うニカは
私と敢えて目を合わさないようにしてたのか
ずっとこっちを見てなかったのに
最後に目が合う。



久しぶりのニカ。

笑った顔や
最後のお刺身の一切れをどっちが食べるかで本気でケンカしてくる顔や
バラエティを真剣に見てる顔や
ドラマ見て一緒に泣いた時の顔を思い出す。



あぁ、好きだな。

やっぱりニカと会うと心が動く。



普通に会いたい。

笑いあったりケンカしたり
肌に触れたい、触れてもらいたい。



そう思った瞬間に冷たく逸らされたニカの瞳。





……………あっ。


何かが崩れた音がした気がした。






「A？」



にぃの声で我に返る。



にぃを見ると『しっかりしろ』って言われた気がした。



そうだよね。
ここで変な態度取っちゃダメだ。

「失礼します」

慌ててニコッてスタッフさんに笑うと

「ホントにありがとうございました」とか「助かりました」とか言われて
にぃのお陰で怪しまれないギリギリのラインだった感じで収まる。



危なかった。

にぃをチラッと見るとにぃもホッとしてる感じ。



「報酬なんですが…」

スタッフさんがどうしましょう、って顔で言うけど

「あ、大丈夫です。正式に何かをご依頼いただく時で」

たった数分の事でいただけない。

「あはは、じゃあ今度一杯奢るよ」

にぃが言うから

「そうですね、それでお願いします」

返しながら『一杯どころかいっぱい、いやボトル1本だよ』って目線を送ると
『はいはい』って顔をするにぃ。



部屋を出ようとすると

「送ってくるー」

スタッフさんを制してにぃが言ってくれる。



2人だけになる。



「……悪かった」

「ううん、大丈夫」



にぃの素の声に泣かないようにするのに必死だった。

まだダメだ。
泣いちゃダメ。

にぃの後ろを歩いて
エレベーターに乗る。



エレベーターに乗った瞬間
溢れだした涙。

「ん」

にぃがグイッて私を抱き締める。



「ごめん」

「………ううん」



にぃは悪くない。

ありがとう、にぃ。
ニカに久しぶりに会えてそれだけで嬉しかった。



嬉しかったのに。

ニカはそうじゃなかったのかも。



逸らされた目が、完全に他人の目だった。



ニカにとって私がもう用済みになったんだろうね。

だから連絡もくれないし目も逸らされたんだろう。






さよなら、ニカ。

もう会うこともないだろうね。

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