すぐ近くにいる another story 11

秘めた想い その後 16 ページ9

……何だか今日は元気が出ない。



難関の資格を無事取れた玉森くんは最近忙しそうで
LINEでやり取りするだけの日々。

お休みの日は寝てるしく
会いに行っても一緒にお昼寝して過ごした。
それでも十分幸せだったけど何だか申し訳なくて。

私も忙しい事にして宮田くんにも口止めして会わなくなって。

電話をしても寝落ちしちゃう玉森くんと
最後に会ったのは3ヶ月前だ。



会いたいなぁ……。

電話してみようかな。
でもまた寝ちゃったら申し訳ないし。



終業のチャイムが鳴る。
週末だからみんなそそくさと帰っていく。

何もやる事ないなー。
ため息をついてパソコンの電源を切ってると

「Aちゃんっ」

宮田くんから声を掛けられる。



「今週末タマの所行く？」

「ううん、行かない」

「じゃあうちに遊びに来ない？タコパしようと思ってるんだけどっ。姫にも会って欲しいしさ！」



ニコニコしてる宮田くんは3ヶ月前に女の子が生まれて今ではすっかりイクメン。
育休もしっかり取って立派なパパになった。

Aちゃんも元気そうで
たまにこうして遊ぼうって声を掛けてくれる。



「うん、行く」

「わーいっ！じゃあ明日ねっ」



楽しそうに帰っていく宮田くんを見送ると

「Aさん」

営業部の南川さんに声を掛けられる。



「良かったらこの後飲みに行きませんか？駅前の焼鳥屋さんでハイボール半額なんです」

「へー！…行こっかな」



南川さんは営業部の飲み会によく誘ってくれる。

だからてっきり営業部の人たちの飲み会なんだと思ったら
南川さんと2人だけだった。



まぁたまにはいいか、と思って飲んでお店を出た時に

「送りますよ」

南川さんに言われる。



「ううん、まだ早い時間だし大丈夫っ」

「でも……」

「また月曜日に」

帰ろうとすると南川さんから

「あの、俺、送りたいんです！」

少し張った声で言われる。



「俺、前からずっとAさんが本社からたまに来るのを楽しみにしてて、一緒に働けてからものすごく嬉しくて……」



言われて気づく。

そういえば最近南川さんは飲み会でも席が近いし
仕事でもやたら気にかけてくれるな、って。



「Aさん、俺と付き合ってくれませんか？」



南川さんは真っ赤だ。

きっとお酒のせいだけじゃないだろう。



「ごめんなさい、お付き合いしてる人が居るんで」



お断りすると

「……そうですか」

びっくりした顔で言われた。



……あぁ、彼氏が居るように見えてないんだな。

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