すぐ近くにいる another story 11

嘘だらけの婚約者 その後 12 -side Y- ページ48

店を閉めて出ると

「よっ」

裏口にスーツからスエットに着替えてるミツが居た。



「なんの用？」

「うわ、冷たっ」



ミツは笑ってるけど
こんな遅い時間に居るとかおかしいし
何か用事なのは丸わかり。

やっぱり

「よこーさんさ、Aにちゃんと好きって言ってる？」

なんてミツが聞いてくる。



「そんなの言わなくても分かるでしょ」

指輪渡して、ずっと一緒に暮らしてんのに。

「女の子はね、ちゃんと口にしないと分かんないもんだよ？」

ミツはそう言って帰ろうとして

「あ」

わざとらしくいま思い出した、みたいな感じて呟いて振り返ると

「Aね、よこーさんが思ってるより不安になってるからね？」

って謎の言葉を残して「じゃーねぇ」って帰っていく。



変なミツ。

不思議に思いながら帰ると
とっくに帰ってるハズのAが居ない。



なんで？
何でAが居ないんだ？

見た感じ帰ってきた形跡もない。

先に帰らせてから何時間も経ってるぞ？
スマホにも連絡はない。



途中で倒れてたりとか………。



俺が帰って来たことに気づいて奥からパピーがやって来た。



ちょっと遅い時間だけど

「パピー、一緒にAを探してくれる？」

リードを見せると
せがむようにパピーがじゃれてくるからリードをつける。



リードをつけてからパピーは楽しそうにはしゃぐけど
辺りをクルクル回ってクンクンと鼻を鳴らした後で
俺を振り返って意味ありげに見つめてくる。

Aを探してるんだろう。

くーん、くーん、と寂しそうに鳴いて
リードの範囲内をチョコチョコ動くパピーは
また黙って俺を見あげる。



「Aを迎えに行くか」



パピーに声を掛けるとパピーは
俺より先にAに抱きつくぞと言わんばかりに前のめりで走り出す。



いや、俺が見つけるから。



歩きながらAのスマホに連絡してみると
あっさり繋がったけど

『それが、私もいま何処にいるのかよく分からなくて』

なんて訳分かんない事を言って

『しばらく帰らないけど大丈夫だから先に寝てて』

って言うと
話してる途中で電話と切れた。




Aの事だ。

スマホの電源が切れたんだろう。
昨日充電し忘れたーって朝騒いでたし。




めんどくさい。

Aは本当にめちゃくちゃめんどくさい。

めちゃくちゃめんどくさいから放っておけばいいのに
放っておけない。




それは俺がAの事が大好きでベタ惚れで

めんどくさいAも含めて、愛してるからなんだ。

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