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嘘だらけの婚約者 その後 8 -side Y- ページ40

ショックだった。
Aがしんどかったのに気づけなかった事が。
違和感を感じた時に真っ先に浮気を疑ってしまった事が。



自分がAの事を信じてあげられなかった。

それが思った以上にダメージが大きい。



子供がたくさん産めないとか
身体にキズが出来るからとかそんな程度で
俺がAと別れると思われた事が悲しかった。

そもそもえっちを避けられて真っ先にAが浮気してるって思った。

Aが俺の事を大好きなのをミツは分かってたのに
俺がAの事を信じてあげられなかったのがショックだった。



でもAはそんな事知らないから

「さっさと言えば良かったのに」

落ち込んでるのを隠して言う俺に

「言えないよ。渉が大好きだから、渉に振られるの、嫌だもん」

なんてストレートに感情をぶつけてくる。



だからなんでそんなにAは素直なの？

しまいにはポロポロ泣き出したAは

「渉と、離れるの、嫌だもん」

なんてグズグズ言いながら話し出して

「振られるの、怖かったんだもん」

ヒック、ヒック、ってしゃくりあげながら怒られた子供みたにい泣き出すから。



あぁ、俺がAの事を好きって伝えきれてないのかな、って思う。



そーいや人間ドッグ受けた日に様子おかしかった時も
体重計買うの提案したけど
あの時もっとちゃんと話聞けば良かったよな。



だから

「ん」

おいで、って意味で腕を広げると
ホッとした顔をしてまっすぐやって来るAは俺にしがみついてわんわん泣き出す。



そんなに不安だったんだ。



泣きじゃくるAの背中をトントンしてると

「黙ってて、ごめん、なさい…」

ヒックヒックしながら言うから

「んーん、俺も責めてごめん。不安だったんだろ？」

「めちゃくちゃ、怖かったーー」

「うん、ごめん、なのに責めることばっか言って悪かった」

「………ごめん、なさい」

しゃくりあげて泣くAが
今までの心配から解放されたからなのかものすごく泣く。



ちょっと考えれば分かる。
ミツも言ってた、俺が好きって分かるって。

ホントだよな。



「つーか、何で夜えっちしなかったの？」

「筋腫あると子供育てられないから、って」

「あぁ、なるほどね」



とりあえず後で自分でも調べるか、なんて思いつつ
背中をぽんぽんしてると

「そっか、渉、ごめん」

Aがこんな時に限って察しがいい。



「もーいいよ」

「……ごめん」



ホント、振られる訳じゃなくて
とにかく良かった。

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