すぐ近くにいる another story 11

嘘だらけの婚約者 その後 8 ページ39

「………あのさ」

「はい」

「Aにとって、俺って何？」

「彼氏。結婚前提の」

「だよな？」



渉は大きくため息をつくと

「なんで入院するような病気が見つかった事、さっさと言わないわけ？」

ものすごく嫌そうな顔。



うぅー、この展開。
やっぱり最初に言えば良かった。

怒鳴られる方がまだいい。
この淡々とした渉の言い方がめちゃくちゃ怒ってるのが逆に伝わる。



「………」

理由を言えばさらに怒られるのを察するから黙る私に

「ほら、さっさと言う」

渉が急かす。



「詳しく検査してから言えばいいと思って……」

「で？その結果、今まで言えずに居ただろ？Aの性格上、最初に言わなきゃどんどん言えなくなるの自分でも分かってんじゃない？」



理詰めしてくる渉は淡々と言うから余計怖い。
渉の口調が怖くて黙る私に

「ほら、どうなの？」

今の渉はガチギレしてるから容赦ない。

少しの沈黙も許さない。
私が言い訳を考えるスキも与えない。



これ企業だったらパワハラじゃない？

母親はずっと私の母親だったから当たり前だけど
渉は私の性格を分かりきってるな、って思う。
私が最初に言わなかったから言い難くなってるのにも気づいてる。



それが嬉しくもあるけど
今はぶっちゃけ渉に対する恐怖の方が勝ってる。



また黙る私に渉は

「それとも何？見つかった地点で俺に言い難い理由でもあったの？」

ようやく責める口調を緩めてくれる。



少しだけね、少しだけ。



ただ、私としても説明しなきゃいけない。
だから話し始めた。

「………渉が子供好きって分かったら、言いにくくなったの。子供、3人までしか産めなくなるから」

ミツさんの弟の子供見てる時の顔がさ、って言うと
あぁ、って渉は素っ気なく言うから実はあまり関係無くてただあの時は笑ったのかも。



「渉が、子供たくさん欲しかったらどうしよう、って思って。大家族目指してたら3人までしか埋めないなら別れよう、って言われるかな、とか。お腹切るからキズのある女は要らないとか言われるかな、とか。色々考えたら言えなくなって……」



渉は私の言葉を真剣に聞いてた。

そして一通り話し終えた私に渉は鼻で笑う。



「バカじゃないの？」

「……薄々、気づいてた」

「薄々かよ」



いつものツッコミもどこか冷たくて。

あぁ、やっぱり渉は大家族を望んでたか
キズとか嫌なのかな、って思った。



なのに

「さっさと言えば良かったのに」

悲しそうに渉は言った。

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