すぐ近くにいる another story 11

嘘だらけの婚約者 その後 7 ページ37

パートって嘘をついて検査を受けたら
渉にパートに行ってない事がバレて

「浮気？」

渉から聞かれた時。



嘘ついてる自分を棚に上げて
あぁ、渉にとって私の気持ちって
そんな風に見えてるんだ、って思った。

浮気なんてする訳ないじゃん。

渉の事が好き過ぎて
振られるのが怖くて病気のことを言えないのに。



涙が溢れて零れそうになったタイミングで

「こんばんはーっ」

入口から元気な声がして振り返ると
ミツさんの妹さんが居る。



「少し早いんですけど。今日朱莉のお迎えがたい兄で、私だけ先に来ちゃいましたー！」



嬉しそうに笑う妹さんの顔を見てたら
そういえば看護師さんって言ったな、と思い出したら
私、大丈夫なのかな、って聞いてみたくなったのと
渉の態度が悲しかったのが重なって。



妹さんに抱きついてしまった。

面識なんてほとんど無いに等しいのに。



「え！？……どうしたの？」



妹さんが言う。
そりゃそうだろう。

でも、何も言えなくて。
妹さんに何から言ったらいいのか分からなくて。
そんなタイミングで

「ちわー……、って、は？どした？」

ミツさんの声がする。



「ほら、A。妹さん、困ってるだろ？」



渉の声がする。

やだ。今は渉と話したくない。
渉は私が他の人と浮気してるって疑ってるもん。



だからついギュッ、て妹さんに抱きついちゃったら

「ね、店長さん。この子の休憩、何時からですか？」

妹さんが優しく抱き返してくれる。
その優しいハグにさらに泣きそうになる。

「……まだ、勤務時間じゃ無いですけど」

渉が言うけど
正確にはもうお手伝いしないといけない時間。



ただ、お店に入った時のお客さんがほとんど居なかったのを見る限り
まだ大丈夫だから渉が言ってくれたんだろうけど。



「予約の時間もまだだし、ちょっと彼女とお話ししててもいいですか？」

ぽんぽん、って背中を優しく叩いてくれながら妹さんが言う。



え、いいんですか？

って私が聞きたいくらいなのに。



「……はい、どうぞ」



渉の声が完全に不満そう。

そりゃそうだ。



「ね、みつ兄。私とこの子にホットミルク奢ってー」

「は？………いいけど」

「はーい、決まりっ」



妹さんがポンポン、って私の背中を軽く叩いて

「だって。2人がいいって言うからお話しよーっ」

無邪気に言ってくれるから。



ゆっくり腕を解いて目が合うと妹さんがミツさんそっくりの笑顔で笑ってくれて。



また泣きそうになった。

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