すぐ近くにいる another story 11

嘘だらけの婚約者 その後 6 ページ35

精密検査の日。

渉にはパートって言って家を出た。



検査の結果

「これは2週間入院してお腹切って取らないとダメかなー」

お医者さんが言う。



「お腹を切る？2週間入院？」

「うん。10センチくらい切るかなー。まぁ術後の経過で入院期間短くなる事もあるけどね」

「………」



お腹を切るんだ。

ショックだった。
お腹を切る、って事が。

しかも2週間入院。
パートにも渉のお店にも迷惑を掛けちゃう。
渉に関してはお店だけじゃなくてパピーのお世話も。



ぐるぐる考えてたら

「ここを切るからねー、帝王切開と一緒になるから子供産めるのも最大で3人まで。今後お腹はここからしか開けられないから」

お腹の写真をペンでなぞりながらお医者さんは淡々と言う。



そして

「御家族の同意いるねー、全身麻酔かけるし事前に自己血抜いて万が一の輸血用に自分の血を用意しとかないといけないし。失礼だけど、ご結婚は？」

お医者さんから言われて。



「……結婚は、まだ。婚約はしてますが」

「そう。となると、手術の同意は御家族から貰ってね」



当たり前なんだけど
何だかショックだったのと、ホッしたのが半分。

親なら同意は簡単にしてくれるだろう。

なんなら付いてきてくれたりするかもしれない。



ただ、渉にはなんて言おう？
どこから説明したらいいんだろう？

お腹が切られた嫁なんて要らないとか言うかな。
子供が4人以上欲しかったらどうしよう？



MRIと自己血を抜く日と
入院期間を決めないといけなくて。

MRIだけは先に予約をしなきゃいけないって言われて
候補に上げられた日の中にミツさんの妹さんの誕生日があった。

夜にミツさんとミツさんの弟夫妻が来るから
サプライズパーティをしよう、ってミツさんと作戦を立てている日だった。



……パートは休みだし、予約は夜だからこの日ならいいか。



その日に予約を入れて実家に電話をする。
手術の同意の御願いをしたら

「渉くんには言ったの？」

母親に言われる。



「まだ」

「そう。言い難いかもしれないけど、ちゃんと早目に言いなさいよ」



母親は私が言いにくいのを察してくれてる。

さすが母親。



「アンタの性格上、このままズルズルいくとどんどん言い難くなるわよ」

「……うん」



そう、もうすでに言い難くなってる。

最初に結果が出た時に言って置けば良かったのに
今更言うと『何ですぐ言わなかった？』って小言が始まるのが目に見えてる。



……お別れされちゃうかな。

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