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嘘だらけの婚約者 その後 5 -side Y- ページ34

Aに元気がない。

いや、元気が無いというより
考え事やぼーっとしている事が増えた。



ベッドの中で甘えて来たかと思ったら
拒まれて

「でもくっついて寝ていい？」

って泣きそうな顔で言うから。



「どうかしたか？」

「……渉の抱っこ、大好きなの」



ギュッ、って俺のパジャマを握って甘えるAは
心変わりをしたって感じではなさそうで。

ただ、シたくないんだとしたら
何が原因か分からないし
もしかしてシた時に何かしちゃったとか何か嫌な思いさせたのか、と思うと不安になる。

だからシないだけで
ハグやキスはするしくっついて寝るけどそれ以上はシなくなってしまった。



そして変わった事と言えば
常連にミツの弟家族が増えた事。

ミツの弟の太輔君はうちのコーヒーを気に入ってくれて
たまにうちに読書しに来るようになる。



太輔君のコーヒーが空になってて
ちょうど1杯分余ってしまったコーヒーがあったから注いでみた。

「……え、ありがとうございます」

「いーえ、冷めてるんで申し訳ないんだけど余ったんで」

ナイショね、って小さく付け加えると
はにかんで笑う太輔君はとても可愛い。



カランコロン、と来店を告げる音がするから入口に目を向けると

「お、太輔じゃん」

入ってきたのはミツ。

当然、カウンターの太輔君の隣に座る。



「いらっしゃい、ミツさん」

「おー、Aありがとなー。人間ドックの謝礼の図書カード届いたぞー」

「…あぁ、うん」

Aの返事に少し間があるのが気になったけど
ミツのおしぼりとかを持って来てくれるAは

「ミツさんのお陰で太ったの分かって良かったよ」

「あはは、そっか」

ミツと笑いあってるから違和感は気のせいか？



太輔君もミツが来たから一度読書を辞めて会話に入ってきて

「へー！人間ドックしてるの偉いですね。俺、受けた事ない」

Aに声を掛けてる。



「ミツさんから勧められたの。図書カード貰えるから、って」

「へー。なら紹介してもらって受けようかな」

なんて話してると

「太輔はAんトコで受けろよ、安くなんじゃね？」

ミツが言う。



「Aん所？」

自分の名前が出て不思議そうなAにミツは

「あぁ、Aって俺の妹で太輔の嫁の方ね。看護師なの」

って言うとAが驚いた顔をして。



「……看護師さん、なんですね」



噛み締めるように言うから。

後から思えば何が引っかかった？と思ったけど
この時は気のせいだと思ってた。

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