すぐ近くにいる another story 11

秘めた想い その後 12 -side T- ページ2

Aに返さなきゃいけないしおりを
勢いで持って帰ったものの。

どうやって送ろう？

ただAに送ったところでなんの意味もない。
大切にしてくれてた理由くらいは聞きたい。



そもそもAはどうしたいんだろう？

『距離を置く』ってどうやって終わるの？

置いてみてどう思うか、って
そんなの『元に戻りたい』に決まってる。



でもAもそう思ってくれてるかな。

なんて考えてたら宮っちから着信。



「もしもし？」



電話に出るとザワザワとした雑音。

あと一緒に聞こえるのは泣き声？



『で？Aは玉森さんの事、どう思ってるの？』



北山さんの声がする。



何で北山さん？



『好きだよ、ずっと好き。今でもずっと。……ッ、だけど、玉森くんはそうじゃないから。……私と居てもずっと悲しそうだし、……ズッ……笑ってくれないんだもん』



泣きながらAが言ってる。



え？泣いてるのはA？



混乱してるところに

『じゃあ、何で距離置くなんて言ったの？』

宮っちの声。



『別れよう、なんて、私から言えなかったんだもん。距離が離れるか、玉森くんが愛想尽かしてくれれば、玉森くんから、別れよう、って、言ってくれると、思ってたから……』

ヒック、ヒック、としゃくりあげながらAが言ってる。



そうなの？
だからAは距離置こうって言ったの？



しかも全然俺を責めてない。
最低なのは俺なのに。



『Aバカなの？悪いの玉森さんじゃん』

北山さんが言っても

『玉森くんは、悪くないの。可愛くない、私が悪いの。だから、玉森くんは、女の子と飲みに行ったの』

Aは俺を庇うし、そもそも女の子と飲んだって何？と思ってると

『女の子と飲んだの？』

『最近部下になった、若い子。玉森くんは、その子と居る方が笑うはずだから』

宮っちが聞いてくれてAが答えてる。



グスッ、てAが鼻をすする音と『トイレ行くねー』って宮っちが呟いてる声。



少しして

『タマ？聞こえてた？』

宮っちの声。



『今ね、Aちゃん飲ませたら大泣きしちゃってさ。やっと本音言うからスピーカーにして聞かせちゃった』

宮っちは明るく言うとさらに

『これが最後のチャンスだと思うよ？タマどうする？こっちにはいま北山さんが居るよ？このままだと北山さんに取られちゃうよ？』

忠告をしてくれる。



どうするかって？

そんなの決まってるよ。



「ごめん、宮っち。1つだけお願い聞いてくれる？」

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