この想いの結末は 10

after そしてそれから 36 ページ9

Aside


太輔の様子がおかしい。
これは絶対気にしてる。



鼻先にキスをくれて

「どんなAも可愛いよ」

なんて甘い言葉をくれた太輔。

手を繋いで歩いているし
話しかけると普通に返してくれるけど
どこか元気がない。



ちゃんと話さないと。



ついギュッと太輔の手を握ると
太輔がびっくりして

「ん？どした？」

ものすごく優しく声を掛けてきてくれるから
どうしようもなくときめく。



…じゃ、ないよ。

ちゃんと話さないと。



「あのね…」



言いかけた時に太輔が立ち止まる。
太輔がスマホを手にして

「マネージャーからだ。…ゆっくり見てこいって」

武田さんからのLINEだったみたい。
読みあげてくれる。



「うん、じゃあゆっくり見ようか」

「そうだね。またボイスチェンジャーで遊ぼうか」

「あはは、またやるの？」



2人で笑い合う。



太輔の笑顔が少しだけさっきより緩んだから
ホッとするけど。



なんとなく分かる。

まだ心から笑ってない、って。



あと少しでくらげのコーナー。

まえに太輔と来た時にアコちゃんと武田さんが告白するならここだね、って言ってたところ。



だからギュッて太輔の手を握ると

「ね、太輔。くらげ、ゆっくり見たい」

言うと柔らかく笑う太輔は

「ん、じゃあ見ようか」

ギュッと握り返してくれて誰もいないのを確認してからまたちゅっ、て鼻にキスをする。



「もー、鼻はダメ」

「ならこっち？」



唇にちょん、とキスをする太輔。

そうじゃないんだけどっ。

でも太輔とのキスは好きだから黙って睨む私に
太輔は緩く笑って歩き出す。



誰もいないから出来るけど
こんなところ誰かに見られたら…



でも太輔と離れるなんて絶対嫌だから
ギュッと太輔の手を握っちゃって。

「ん？」

不思議そうに振り返る太輔に
なんでもないよ、って首を振る。



「さっきからギュッてしてくるの可愛い」



イケボで太輔がからかってくる。



可愛いくなんかないよ。

素直じゃないし。



泣きそうになってると

「……何か言いたいことがあるの？」

優しく聞いてくる太輔。



「ん？」

誤魔化そうとするけど
そうはさせない、と言わんばかりの顔をする太輔は私の頬を撫でながら

「どうしたの？言ってみて？」

語りかけるように言う太輔の背後の水槽には
綺麗なくらげたち。



ものすごく幻想的で。

太輔の整った顔に見蕩れちゃう。



「…好き」



呟くと太輔は照れて笑って
そっとキスをくれた。

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