この想いの結末は 10

after そしてそれから 34 ページ7

水族館では
人が少なかったから
普通に歩けた。

とはいえ
さすがに多少気にして歩くけど
幸いみんな魚に夢中で
俺たちのことは見てる様子がないから助かる。

からかうといつも通りの反応だし
抱き締めたりキスをすると
ダメって言いながらどこか嬉しそう。

でもまずちゃんと謝りたい。



なのにいざ謝ろうとすると

「…どうしたの？」

「何が？」

「太輔、いますごい顔してるよ？」

Aに言われて
水槽に映る自分の顔を見ると確かにすごく引きつっていた。



少なくともデート中やキスする時にする顔じゃない。



気まずいな、と思ってるとAが俺の頬に触れる。

その顔が不安そうだから
心配かけてるのが申し訳なくて
大丈夫だよ、の意味を込めてしばらくされるがままになってた。



頬を触り続けるAは少しすると表情が柔らかくなってくるから

「…そろそろ行こっか」

声を掛けるとキョロキョロと周りに人が居ないか確認してから俺の頬を引き寄せて
音が立たないキスをする。



Aから外でキスとかすごくびっくりしたけど
照れた顔のAが見れたし
その顔もものすごく可愛いからいいかな。



手を繋いで歩いてると
そういえば前もこんな感じで歩いたなー、って思い出す。

あの頃は友達以上になっちゃダメって言い聞かせてて
友達の距離感を保つのに必死だった。



こんな未来が待ってるから大丈夫だよ。

あの頃の自分に言ってあげたい。



「思い出すね」

Aが言う。

あ、Aも思い出してたんだ。
嬉しくてニヤけるのを我慢しながら

「ん？何を？」

わざと聞き返すとAがむぅ、って音がしそうなくらいむくれてて笑っちゃう。



そのまま毛布って例えられた話をしてると

「今もそうだよ。太輔の近くってすごく落ち着く」

Aが緩く笑う。



嬉しいけど
あまり落ち着く存在になり過ぎちゃってると
それはそれでなんか違うから。



「おかしいなー、俺ってキャーキャー言われるキャラのはずなのになー」

わざと悔しそうに言ってみると

「カッコイイよ、太輔」

目を見てAに改めてキチンと言われて。



…カッコイイって認めてくれてるんだ。

そばにいるAが言ってくれると言葉の重みが違うな。



「認められたい人に『カッコイイ』って言われるとこんなに嬉しいんだな、と思って」



俺もちゃんと言うと
はにかんで笑うAが愛しくて。



これからも頑張ろうって思える。



そんなAに対して
感謝しかない。

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