すぐ近くにいる another story 7

シロツメクサ Ki -side K- 15 ページ14

本社勤めの楽しい原因の1つに
Aとの再会もあった。



同期と呼べるのは数人いるけど
地方に行った奴もいるし女の子は寿退社した。



とにかく気が楽な奴。

それがAだった。



すげー陰キャなのに
犬がめちゃくちゃ好きで
犬のことになったらテンションが変わる。

仕事の価値観が一緒で
同期飲みでよく盛り上がった。



俺が本社に戻る前から本社にいたA。

異動が決まって挨拶で本社に寄ったら
喫煙所に1人で居る時に

「久しぶりに飲まない？」

Aから声を掛けられた。



「なに、急に」

「ダメならいいけど」

「ダメじゃねーけど。ドコで？昔よく言ってたトコでいい？」

「ううん、ココ」



スマホに送られて指定された焼鳥屋はちょっと遠い。

ワンチャン告白でもされるのかと思ったけど
それにしちゃサラリーマンのおっちゃんたちが集まる居酒屋だった。



指定された時間に行くとビールで乾杯してすぐに

「……北山」

すごく深刻そうに呼ぶから

「………なに？」

何を話されるのかと思って身構えた。



「…………タバコ、吸わせて」



振り絞るように言うと

「は？」

驚いてる俺を余所にタバコに手を伸ばして吸い出す。



「………あぁーー、最高ーーーー」



マジで幸せそーにタバコを吸うのが
面白くて。



「…んだよ、これかよ用事」

笑っちゃうと

「もー吸いたくて吸いたくて。でもうちでチェリー飼いだしたから吸えなくて」

もう一回タバコを口にして幸せそーに煙を吐く。



「会社で吸えばいーじゃん」

「今更吸うキャラとか出せなくて」

「出たー、猫かぶり！！」

「…会社の総務って吸いにくいよ」



ふぅーって煙を吐いて
本当にウマそーにタバコ吸うA。

ただタバコを吸ってるだけなのに何だか色っぽい。



「急に呼ぶから告白でもされんのかと思ったよ」

「は？しないし。私彼氏いるもん」

そこでふーっとまた煙を吐いて

「……多分次会う時フラれるけど」

なんて切なそーに言う。



「は？」

「…なんかね、理想の子じゃなかったってさ」



タバコをふーーっと長めに吹くと

「あなたの理想なんて知らないわよ、って思うけど」

自嘲気味にAは笑う。



どーやらプライベートもストレス溜めてそーだな。



とにかくいきなりこんなペースのAもいるし
飲むのにも困んねーなって思えた。



犬溺愛のAと飲むのは月1ペース。

そしてAと飲みに行く店に
焼鳥屋だけじゃなくもう1軒追加された。

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