すぐ近くにいる another story 6

妹。F -side you- 38 ページ10

大阪最後の日の前日。

部屋に戻ると
最後の荷物を入れる。

ここに来る前
着替えとして置いておいた服や下着。

これが私の最後の荷物。



そしてカバンの中から
フォトフレームと
さっきたい兄に内緒で現像した写真を取り出す。

ここ数日で撮ったたい兄とのツーショット写真の中から一番いいやつをフォトフレームに入れた。



ポスカをシャカシャカ振ってフォトフレームに絵を描く。

まるで昔の女子高生みたいに
写真をデコった。



泣きそうになる。

おそらく
たい兄と会うのは明日で最後だから。

仕事が忙しい私は
年末年始も家に帰れない予定だ。

ママやみつ兄には
近くに居るから連休出来たら会いに行こう。



深呼吸をしてフォトフレームに書く。

『たい兄大好き』

私の最初で最後の告白。



溢れる涙が止められない。



「…っ、く、……っ」



声出したらたい兄が近くを通ったら気づいちゃう。

声を殺して泣いた。



泣いて泣いて、泣き止む頃
部屋の外で足音がする。

私の部屋の前で止まって

「Aー、お風呂あいたよー」

いつものたい兄の声。
だから

「はーい」

いつもの声を出す。



遠ざかる足音。

また溢れてくる涙。



頑張ったね、私。

偉かったよ。



タオルで涙を拭くとお風呂に入る。



お風呂には
私が大好きなバスソルトをたい兄が入れてくれてる。



たい兄は「Aもその方がいいでしょ」っていつもお湯を変えてくれる。

もったいないって思うけど
たい兄は「俺は入浴剤とかいらないけどAは欲しいでしょ？」って
会社の人がくれたっていう
リラックス効果があるバスソルトをたまに入れてくれてた。



会社の人がくれたとか言うけど
何でその袋のバーコードにシール貼ってあるの？

買ってきてくれたのバレバレだよ。



脱衣場のゴミ箱に
またシールが貼られているバスソルトを見つけて
泣きそうになった。

最後だからか私が『良かった！』って言った高いやつ買ってくれてる。



また泣きそうになって慌ててバスルームに駆け込むと
シャワーを全開にした。



たい兄のばか。



うそ、たい兄大好き。

一番好き、誰よりも好き。



泣きながらシャンプーをした。



シャンプーの泡と一緒に
この気持ちも流れてくれればいいのに。

でも全然流れてくれなくて。

ただ涙が止まらないだけだった。



次の日たい兄がいない間に
たい兄のベッドサイドにフォトフレームを置く。



バイバイ、たい兄。

心の中で呟いて部屋を後にした。

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