シロツメクサ Ki 26 ページ49
明るい時間に
ごみ捨て以外で2人で歩くとか
初めてで。
なんだかくすぐったい。
スーパーに向かう途中に公園があって
そこを通ると近道になる。
公園の中を通ると
途中にシロツメクサがあった。
「…あ」
「ん？」
私の視線の先にあるものに気づいた北山さんは
「シロツメクサじゃん」
つぶやく。
「懐かしー、クローバー探しとかしなかった？」
「あはは！したした。あと花冠とか」
「…さすがに俺はしなかったなー」
「悲劇なんだよ、花の中に虫とかいると次の日……」
「うわ！やめて！そーゆーの苦手っ」
北山さんが腕を摩って嫌がる。
面白くて笑っちゃう。
「クローバー、探す？」
北山さんが聞いてくるけど
「んー…いいや」
これ以上、北山さんと思い出を作りたくない。
2人で鍋とお酒を沢山飲んで食べて
笑えるようにコミカルなアメリカのアニメを流して
ずっと笑ってた。
ずっと、ずっと。
「今日、どっちの家で寝る？」
「北山さんちがいいな」
「ん、わかった」
片付けて各部屋でシャワーを浴びる。
ベッドに入った時
「ヒロ、このペンギンのぬいぐるみ持ってく？」
「え？」
枕元にあった北山さんのペンギンのぬいぐるみを渡される。
「…いらないの？」
「うん。だってヒロいるからいらねーもん」
北山さんにニッて微笑まれる。
気づいてないフリしてるの？
それとも気づいてて敢えて聞かないの？
聞きたいけど聞けない。
聞いた結果、どの答えでも私は困るから。
黙る私を北山さんは
ペンギンのぬいぐるみごと柔らかく抱き締める。
けど、何も言わない。
どのくらい時間が経ったか。
ふと顔をあげて北山さんを見上げる。
北山さんはまっすぐ私を見つめて
「……」
黙って髪を撫でてくれる。
まるで、私が何か言うのを待つように。
好き。
北山さんが、好き。
でも
北山さんは『A』がダメだから。
「……寝よっか」
振り絞るように声をかけると
「ん」
北山さんは微笑んで顔を近づけてくる。
そっと重なる唇。
ちゅっ、と音をたてて離れてまた重なる。
何度か重なったあと
「おやすみ」
北山さんは甘く囁く。
「おやす…」
み、って言う前にまた唇に重なった。
ちゅっ、とまた音を立てて離れた後。
いつものように抱き締められて眠りについた。
朝なんか
永遠に来なければいいのに。
温かい北山さんの腕の中で
声を押し殺して泣きながら眠った。
-END-
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shizu(プロフ) - りーちゃんさん» コメントありがとうございます！気づいてなくてごめんなさい。最近更新頑張ってますのでまた読みに来てください。 (2021年2月6日 12時) (
レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りーちゃん(プロフ) - shizuさんのお話、ほんとどれも大好きです。また更新楽しみにしてます♪ (2021年2月3日 22時) (レス) id: 08f03cdb41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：shizu
| 作成日時：2021年1月28日 12時
