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シロツメクサ Ki 25 ページ48

小夜子ママに
菊池様が現れた話をした。



そして

「来月末で退職させてください」

小夜子ママに告げた。



「……わかったわ」



寂しそうな顔でママが言う。



「皆には知らせないで辞めます」

「うん」

「引越して落ち着いたら必ず連絡するんで」

「もちろん」



小夜子ママがハグしてくれる。

それだけで泣きそうだった。



そして私は就職活動を開始する。

小林様のツテで
知識とパソコンスキルが認められて
関連会社の事務として採用された。



ただし

「簿記の資格も取ってね」

来月の試験を急に受けることに。



数日後
休みの日が北山さんと久しぶりに被った時。

北山さんはその前の日からうちで寝た後
朝ごはんも一緒に食べてそのままうちに居た。



そして本棚に置かれた簿記のテキストを見て

「…何これ?」

北山さんがびっくりしてる。



「次は簿記受けるの」

「へー」



北山さんはパラパラテキストをめくって

「懐かしー、俺も持ってるよ」

「え、そうなの?」

「一応、数字理解してないとだし」

「へーさすがだね」



私の過去問の結果を見て北山さんは笑ってる。

「ヒロらしいね。決算書とかは分かってるんだ」

「仕事柄、理解してないとだし」

「なのに伝票切れないんだ。普通逆だからね」



楽しそうに北山さんは笑うと
私を後ろから抱き締めて

「…頑張って」

甘ったるい声で言ってくるから
あまり説得力がない。



「眠いの?」

「ううん、邪魔したくないから俺もちょっと仕事するわー」



一度家に帰った北山さんは仕事のパソコンとかを持ってきて
私の隣で仕事の資料をまとめだす。



「ね、ヒロ。伝票切ってみる?」

「え?」

「さて問題です。これは何費でしょうか」



タクシーの領収書を見せてくる。

「交通費」

「ピンポーン。はい、貸借は?」

「…こう」

書いてみせると

「正解っ」

笑ってくれる。



甘くて幸せな時間。

でももうすぐ終わりを告げる事に
北山さんは気づいているのかも。

勘のいい北山さんは見ているはず。
雑誌の並びに不動産の雑誌があることに。

だからこんなに距離感近いんじゃないかな。



「今日、鍋しない?」

北山さんが言う。



「鍋?」

「弟夫婦が野菜食えって鍋置いてったの。でもでけーのよ」

「…いいね」



最後の思い出にいいかも。



「じゃ、買い物行こ」

「ん」



柔らかく笑う北山さん。

最近見るこの笑顔が大好きだった。




ううん、

いま、北山さんが好き。

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shizu(プロフ) - りーちゃんさん» コメントありがとうございます!気づいてなくてごめんなさい。最近更新頑張ってますのでまた読みに来てください。 (2021年2月6日 12時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りーちゃん(プロフ) - shizuさんのお話、ほんとどれも大好きです。また更新楽しみにしてます♪ (2021年2月3日 22時) (レス) id: 08f03cdb41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2021年1月28日 12時

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