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シロツメクサ Ki 22 ページ45

それからしばらく
北山さんが起きてる時間には
帰らなかった。



ファミレスで時間を潰したり
ブックカフェで勉強したり
漫画喫茶で今更ながらパソコンを覚えたりして
金曜と土曜はそのまま漫画喫茶やホテルに泊まった。

覚えたパソコンで資格取ったりしながら
いっそこの業界からの卒業を考えはじめていた。



北山さんを避けて2ヶ月。

「ヒロ、今日大口来るから頼むわねー」

小夜子ママに言われる。



「私とヒロでつくわよ」

「はい」

「それまでは…」



チラッと小夜子ママが目を送った先には
私が苦手なお客様の菊池様がいた。


………最悪だ。

最近見かけなかったのに。



ただ、数字は取れるしうちの上客に変わりはない。



「…行ってきます」

「悪いわね」



一緒についてくれるのがツグミちゃんだったのが
唯一の救い。

愛想笑いで過ごしてたら
少しすると足や肩を触られる。

ゾワっとした。

「お客様、うちはそういうの禁止なので」

私が言う前にツグミちゃんが言ってくれる。
名前じゃなくて敢えて冷静にさせるために『お客様』って呼ぶとか
ツグミちゃんは機転が利く。

ツグミちゃんを振り返るとツグミちゃんは優しく笑ってくれた。



そのタイミングで

「ヒロさん、お客様がお見えです」

声を掛けられる。



…良かった。

「ごめんなさい、今日予約が入ってて」

「えー、そうなの?」

「申し訳ごさいません。失礼します」

「じゃあお会計で」

ムスッとされたけど
私的にはツグミちゃんがこんな目に合わなくて済むことにホッとした。



あとはツグミちゃんに任せて
小夜子ママのいる席にに行く。

小夜子ママが私に気づいて

「小林さん、紹介するわね」

目で合図されたから

「こんばんは。初めまして、ヒロです」

ご挨拶して席を見渡して笑顔が凍りかけた。



お客様の中に北山さんが居た。



…………嘘でしょ?



北山さんも私と目が合うと顔を引き攣らせた。



その顔を見て逆に冷静になれる自分が居た。

誤魔化すようにもう一度ニコッと笑って
空いている席が北山さんの横だったから

「失礼します」

愛想笑いのままそこに座る。



「どうも、北山って言います」

北山さんは営業スマイルで挨拶してくる。



存じ上げております。



心の中で答えて

「ヒロと申します」

返して名刺を交換する。



北山さんは老舗文具メーカーにお勤めだった。

そして
フルネームは『北山宏光』



……あれ?

『ミツオ』や『ミツル』じゃないだ。

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shizu(プロフ) - りーちゃんさん» コメントありがとうございます!気づいてなくてごめんなさい。最近更新頑張ってますのでまた読みに来てください。 (2021年2月6日 12時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りーちゃん(プロフ) - shizuさんのお話、ほんとどれも大好きです。また更新楽しみにしてます♪ (2021年2月3日 22時) (レス) id: 08f03cdb41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2021年1月28日 12時

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