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シロツメクサ Ki 9 ページ32

それから。

北山さんとは
会うと会話をするようになる。

会うのはたいてい朝。

私は仕事帰りかゴミ出しの時に
北山さんはランニングか出勤の時。



彼女は最近来ていないのか
全然見かけなくなった。



…別れちゃったのかな。

そうだったらいいのに、
なんて思う自分が浅ましい。



生活時間帯が違う私たちは

「今からお仕事?」

「うんっ!今日も契約取って来ちゃうよっ」

「あはは!頑張って!!」

「そっちはどうだった?」

「ぼちぼち。ノルマは達成できた感じ」

「そっか!おつかれーっ」

「行ってらっしゃい」

「ありがと!おやすみー」

挨拶して一言二言笑って会話してすれ違うだけだった。



これでいい。

そう思っていた。



そんなある日。

仕事を終えていつもより早めに帰ってると
目の前をフラフラ歩いてる男の人がいた。



よく見ると北山さんだ。



「…北山さん?」

声をかけると北山さんは振り返って

「あー!Aさんっ」

満面の笑顔で私に近寄る。



見るからにベロベロに酔っ払ってる。



「…どうしたんですか?」

「んー?今日ね、うちの後輩と同僚が付き合いだしたの。俺、キューピットしたの。すごくない?」

「素敵ですね!」



なのに、北山さんは悲しそうで。



「…寂しくなるなー」



ポツリと呟く。



「嬉しいんだけどさ、大切な2人が取られたみたいでなんか寂しいって感じるんだよなー」

北山さんは悲しそうにつぶやく。



なるほど。

北山さんはそれが悲しいんだ。



今日は水曜日だから暦の上では明日は平日だ。
となると北山さんは仕事に行かないといけないはず。

私は休みだけど
北山さんコレはキツイんじゃないかな。



よし。



「ね、北山さん。明日仕事でしょ?」

「…うん」

「この時間でそんなに酔ってると明日良くないよ」

「……かもねー」

「とりあえずうちに帰って着替えててください」



北山さんの手を引いて私は歩きだす。



「えっ?」

「それだけ酔ってるとお風呂は止めといた方がいいね。朝シャワー浴びるとかがいいと思う」

「えっ?えっ??」

「気になるなら顔を洗うのも濡れタオルで拭くくらいで後にしといた方がいいから」

「は?」



驚いてる北山さんをそのままおうちの前まで連れていくと

「はい、着替え終わったらうちに来てください」

「……へ?」

「ではっ」

自分の家に入る。



…私、何やってんだろう?



でももうやるしかない。
小鍋に水を入れて火にかけた。

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shizu(プロフ) - りーちゃんさん» コメントありがとうございます!気づいてなくてごめんなさい。最近更新頑張ってますのでまた読みに来てください。 (2021年2月6日 12時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りーちゃん(プロフ) - shizuさんのお話、ほんとどれも大好きです。また更新楽しみにしてます♪ (2021年2月3日 22時) (レス) id: 08f03cdb41 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2021年1月28日 12時

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