サイボーグな彼女 12

好きすぎるから 29 ページ42

宏光は私を後ろから抱きしめたまま
ポツリポツリと話す。



涼さんが香港に行くって言われた事。

だから最後に私と話をしたいって言ってきた事。



「炭谷さんいい人じゃん。だから少しでもグラッてAが…」

「なりません」



思わず食い気味に答える。



「何でそんなに言いきれるわけ？」



グラッと来ないのは
涼さんじゃなくて宏光が好きって意味なのに
何故か宏光は不満そう。



「逆に何で宏光は私が炭谷さんにグラッてなると思うわけ？」



私が宏光以外に興味があるみたいに言われてすごく納得がいかない。




「だって炭谷さん俺から見てもいい人だもん」

口を尖らせて宏光が言う。



そりゃ決して悪い人ではないけど。



「いい人なら私が好きになるなら私キスマイの皆さんもマネージャーの皆さんも好きになりますけど」



そう返すと黙っちゃう宏光。



でもきっと
宏光は不安だったってことで。



それは私が宏光の事を本当に好きな事を伝えきれてないのと
涼さんと私のやり取りが
北山さんがお店の人の頭を撫でていたのを見た時の私の気持ちと同じなのかもしれない。

だから



「宏光」



宏光が後ろから抱き締めてくれてる手をそっと握って解くと
宏光の方に向き直る。



「好き。宏光が、大好き」



ちゃんと目を見て言う。

宏光の頬に手を伸ばして
チュッて音を立ててキスをする。



至近距離のまま目をゆっくり開けて宏光を見つめる。

宏光は私をじっと見つめ返してくれて。



「…俺も」



低くて甘くて掠れる声で宏光が返す。



言い方と声にドキッとする。



そのまま唇が宏光の唇に塞がれて
私の唇に宏光の舌先が触れて少し口を開くとあっという間に舌が入り込んできて。



また昨日みたいに耳を塞いでくる。

耳を触られてることも頭の中に響く音にも
ゾクッとする。



くちゅっ…ちゅくちゅくっ…



「…っ」



ビクッてなるのを宏光が
私の耳を塞いでる逆の手で腰を抱き寄せて体を密着させる。



長いキスの後で唇を離すとお互い息が上がってて



「『俺も』…何？」



宏光を見つめたまま聞いてみるけど
なにも宏光は答えないで私の唇にキュッて触れて



「…ベッド行こっか」



答えないで私を見たまま宏光は甘い声で囁く。



言ってくれないんだね。



目で訴えると耳元で

「…………だよ、A」

ボソッて呟く。



聞き取れない。

ズルい。



でも顔を見せずに私の手を引いて歩き出す宏光は
多分照れてるんだろうな。

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