サイボーグな彼女 12

好きすぎるから 9 ki ページ4

「無理」

Aは俺のお願いに即答する。



あ、やっとAから敬語が抜けた。

じゃない。
今はそーじゃねーって。



「頼めるのAしかいねーんだけど」

「他にもいるでしょ、メンバーとかavexの人とか歌のプロの人とか」

「ダメ。みんなには完成品聞かせてーの」

「やだ、無理」

「仕事だっつの」

「だからこそ他に頼んでよ」

「いーじゃん、歌ってよ」

「無理だからっ。人前で歌うとか」

「俺しか聞かねーだろ」



そう。

俺のお願いはアルバムに収録する曲の
ハモりと歌割りの相談で
楽譜見れるなら主旋律歌って欲しいってお願いをしている。



「忙しいからavex行く時間ねーし」

「でも他にも頼める人が…」

「俺はAに頼みたいの」



すごい困ってるAが何だか可愛い。



「じゃあせめて主旋律弾いて」

キーボードを出すとAが

「…それならまだ出来ますケド」

その前に座ってくれる。



「じゃ、弾いて」

「分かりました」

仕事モードに戻るAは敬語に戻る。
こーゆースイッチがAらしくてやっぱり好きだ。



「打ち合わせで何度か聞いてるから何となく分かるよな」

「はい」



メロディに合わせて俺が歌い出すと
Aメロの途中でふとAの指が止まる。



「…どした？」

「……いえ」

Aは首を振ってるけど泣きそうな顔をしてて。



まーたAが我慢してる。

だから俺は後ろからAを抱き締めた。
驚いたAがビクッてしてる。



「今から5分だけ休憩」

そう言って俺はリモコンで部屋のライトを薄暗くした。
いつものAと話する時の常夜灯の明るさくらい。

「…え？」

「んー、3分でもいいや。とりあえずいま思ってること言ってみ？」



そう言うと俺の腕をギュッて掴むAは

「3分だけだもんね」

って震える声で言う。



「ん？もっと長い方がいい？」

「ううん、仕事にならなくなるからダメ」

俺が提案しても自分に厳しいA。



さすがだなって笑っちゃうとAはそんな俺の腕をギュッて握ると

「いまの状況が、この歌詞と同じ過ぎて辛い」

「え？」

「幼稚な嫉妬してるの知られたくないとか、君なしで愛を知れないとか」

Aはそこまで言ってズズって鼻をすする。



え？

泣いてる？



驚いてAの顔を覗き込むとAは俺を見上げて

「この歌も『誰のこと考えてこの歌作ったの？』って思うくらい嫉妬しちゃってもうこんな自分が嫌っ」

言いながらポロポロ泣き出した。

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