サイボーグな彼女 12

好きすぎるから 19 ページ23

現地の人の取材対応中。

涼さんの顔色が明らかに悪い。



「炭谷さん」

周りに色んな人がいるから一応苗字呼び。

「…大丈夫、いつものだから」

涼さんは私が声を掛けた意図を分かってる様子。



「尚更ダメですよね」

「平気」

「何言ってるんですかそんな顔色で。薬は？」

「………まだ」

「今のうちに飲んて下さい」



涼さんは貧血持ちでたまにフラフラする事がある。

病院にも定期的に行ってるから多分問題ないだろうけど
付き合ってる頃からたまに薬を飲みそびれて
こういうことがあった。



「早く飲んで下さい」

持ち歩いてる小さいミネラルウォーターを渡すと

「……ごめん」

席を外す涼さん。



そんな私たちを宏光がチラッと見てる。



大丈夫です、って意味を込めて頷くと
小さく宏光も頷いて目を戻す。



取材が終わって猫スーツへの衣装替え。

さすがにこのためだけにスタイリストさんをつけられなかったから
教わったやり方で猫スーツへの着替えを手伝うことになっている。



宏光と控え室に向かおうとすると涼さんも来る。
薬が効いてないからまだ青い顔のまま。

涼さんが猫スーツを持ってくれてるから
そのスーツをそっと持つ。



「炭谷さんは控え室では座ってて下さい」

「いやでも…」

「皆さんの所にいると休めないからこちらに来て、とにかく座って下さい」



つい昔無茶ばっかり言ってた時にダメ出しした時みたいな強い口調になる。



涼さんが少し驚いた顔をした後顔を緩めた。



「…ごめん、助かる」

「いえ」



ドアを開けて宏光と涼さんに入ってもらうと
誘導してくれたスタッフさんにお礼を言ってドアを閉める。



「大丈夫なんスか？病院とか…」

「持病みたいなもんでね。定期検診には行ってるし薬もあるんだけど今日は大丈夫だと思って…」

心配そうに声をかける宏光に涼さんが返してる。



涼さんは昔と同じことを言ってる。



昔はいつも薬飲むのが遅いって私が怒ってたな。

そしてそんな私に涼さんは『心配かけてごめんね』って困った顔で笑ってた。

懐かしいな。



とりあえず薬を飲んだ後ならもう私にやる事はない。



「着替えましょ、北山さん」

「…おぅ」



北山さんの猫スーツの着替えを手伝う。



淡々と着替えを手伝ってる私に
宏光が逆に気になってるみたいだけど。



「はい、終わりました」

「ん、さんきゅ」



宏光の前髪をいい具合に直した時に目が合う。

その目がやっぱり何だか複雑そう。

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