サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 15 ki ページ10

アイツ何やってんだよ。
俺は足早に楽屋に戻る。



現場を見ていた人によると
Aは犯人にカバンで思い切り殴られていて
背中から犯人を壁に叩きつけた後
一度犯人に吹っ飛ばされてるらしい。



…何やってんだよAはっ！

さっきリュック下ろす時一瞬したあの顔。
あれ腕が痛かったんだ。



話を聞いた瞬間は無茶をしたAにはらわたが煮えくり返ったけど

「でもその子、取られかけた上着がよっぽど大切だったみたいで。ずっとその上着大切そうに抱えてました」

って言われて泣きそうになる。



Aのバカ！
俺の上着なんてどーでもいいだろ！



勢いよく控え室に戻るとAがいない。



キョロキョロしてる俺に

「Aさんなら買い物に行きました」

って酒井ちゃんが教えてくれる。



「皆がからかうから居づらくなったんじゃない？ひどいなー」

「…それ言い出しっぺのタマが言う？」

タマの言葉に千賀が突っ込む。



ま、いないなら仕方ねーか。



メシ食って資料読んだりして過ごしてるとドアをノックする音。

やっとAかと思ったら千賀のお気に入りのモデルさん。



「すみません、楽屋泥棒を捕まえてくれたマネージャーさんにお礼言いたくて伺ったんですが…」

なんて話してたらAが戻ってくる。



Aにお礼を言いながら

「スマホも取られちゃう所でした。ありがとうございます！」

チラッと千賀を見る。



…思い出した！
あの洗濯したカード！

この子の携帯とLINEのIDか！！



…そしてこのリアクション。
千賀は送ったんだな。



その子が帰った後
スタジオに戻るAを呼び止めて中から鍵を掛けた。



「上着脱いで」

「え？」

「いいから」

俺の言葉に渋々上着を脱ぐA。


シャツの袖をまくってみると二の腕が真っ赤で真ん中は紫になって内出血してる。

………Aのバカ。

こんなんになるまで俺の上着守ろうとして。



俺はたまらなくなってAを抱き寄せる。

「…心配させんなよ」

声が震える。



もう嫌だ。

意地張って怒ってばっかなのもすごく後悔した。

Aがいなくなるのが嫌だ。
Aに見られた最後の顔が怒った顔なのも嫌だ。

嫉妬なんかしてる場合じゃねー。
俺の見ていないところで勝手に無茶して怪我しないで。



Aのことだからまた「何がですか？」って言われると思ったら

「……ごめんなさい」

俺の背中にそっと腕が回る。
Aの声も震えていた。


俺はさらに抱き締めた。

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