サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 25 ページ29

北山さんには本当に好きな人がいる。

もし北山さんが好きな人と両思いになれたら
ここに居られるのもあと少しかもしれない。

北山さんはすごく魅力的な人だから
本気出したらその相手の人も好きになると思う。



北山さんの腕のに居られるのは
あと少しだけなんだ。

そう思ったら
甘えたくなってしまった。



「…ありがとな」



北山さんは言ってくれるけど
私の方がありがとうございます、なんです。


「んじゃ俺ここ片付けてるからシャワーどうぞ」

北山さんが腕をほどくんだけど。




何だか離れがたいのが半分
どんな顔していいのか分からないのが半分。



離れないし顔も上げない私を
北山さんは急がすことなく待ってくれる。

結局離れない私を
北山さんが何も言わずにまた抱き締めてくれた。


その優しさに泣きそうになる。



北山さんの彼女になる人は幸せだ。
私ですらこんなに満ち足りてる。



…いつか。

いつか北山さんが好きな人に思いを告げて
その人が北山さんを受け入れた時。

私は笑っていられるかな。



そんな日が怖くなって思わず北山さんにしがみつくと
北山さんは一定のリズムですごく優しく背中を叩いてくれる。



こんなに幸せで

同時に悲しい気持ち


私は他に知らない。




顔を上げる時にはいつもの顔をしないと。
また北山さんが変に勘ぐったり心配するから。

でもそう思えば思うほど顔をあげられない。




「Aー」

呼ぶ声が甘い。



「俺、頑張れそう」

「何をですか？」

「これからの色々」

そう言うとフフフッて低く笑ってる北山さん。



「Aのおかげ。ありがと」

「私何もしてないですよ？」

「そんなことねーよ」

またギュッと北山さんが抱き締めてくる。




「怪我しても俺の上着守ってくれたことも、モデルさんとのこと心配してくれたことも」

そう言ってまた北山さんは私の首元に顔を埋める。

「こーして俺のワガママ聞いてくれたことも」



そう言って少し笑う北山さん。



「…ずっと俺のそば離れないで」



そう切なそうに言うから。



いつもなら「ずっとは無理です」って答えるし

北山さんは好きな人居るんだからその人に伝えて下さいって言いたかったけど

あまりに切なそうな声過ぎてそんなこと言えなくなってしまった。




「あははは、ごめん。何か甘え過ぎた」

そう言って腕を解くから北山さんが泣きそうになってないか心配で私も腕を解いて北山さんを見た。



やっぱり少し辛そうな顔をしてる。

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