サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 19 ページ17

「ただいまー」

「………」

北山さんが我が家に入る挨拶がおかしい。



そして何も言わずにシャワーへ直行。
私の家なんですけど。

さすがに10月だから上着いるかな。
今の北山さんの着替えが半袖だから念の為上着を用意する。

私も北山さんに買ってもらったルームウェアに着替えてキッチンに向かう。



焼きそばを作ってると

「お嬢さん、素敵なお召し物着てますね」

相変わらず上裸で現れる北山さん。



「水かビールもありますよ」

そう言ったらビール飲むかと思ったけど

「んー、じゃあ水」

北山さんはそう言って冷蔵庫から水を出す。



…珍しい。



焼きそばと冷蔵庫にあった煮物とか副菜を幾つか出すと「ウマそーっ」ってそれだけでテンションを上げて上を着る北山さん。

「この前もご飯は食べてますよね？」

「今日はモチベーションがちげーの」

「はぁ、そうですか…」

もうよく分からない。



「いっただっきまぁーすっ」

「いただきます」

北山さんはたまに「ウマッ」とか言いながら食べてる。

…そういえば北山さんからこの「ウマッ」も久しぶりに聞く気がする。



食べ終わってから片付けをしてると

「俺も手伝うー」

なんて珍しくやって来た北山さん。
たこ焼き以来なんですけど。

「いいですよ、座ってて下さい」

「いいのっ。早く片付けてお喋りするのー」

なんて甘えた口調で言ってくる。



お喋りって。

しかもシンクそんなに広くないし1人でいいんだけどな。
案の定狭くて肘がぶつかって北山さんが箸を落としちゃう。



「あーゴメン」

慌てて拾おうとする北山さん。

「ここ狭いですし私1人でできますから」

そう声を掛けたけど北山さんは無反応。
床にしゃがみ込んだまま立ち上がらない。



「…A、何これ」

北山さんが低い声で言う。



「どれですか？」

何か変なもの落ちてたかな。
私も床を見ようとすると北山さんは床じゃなくて私の足元を見てる。



「…何この湿布みたいなやつ」



あ。
見つかった。



「いつから？」

北山さんがしゃがんだまま私を見上げる。

「……」

答えない私に北山さんが問い詰めてくる。

「さっきか？楽屋泥棒ん時か？」

「………はい」

そう答えるとため息をついて立ち上がる北山さんは

「局戻ろ。訴える」

出かける準備をしようとする。



「何言ってるんですか？」

「あたりめーだろ。こんなケガしてんのにっ」

「大丈夫ですから」

そう言ってるんだけど北山さんは聞く耳を持たない。

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