サイボーグな彼女 8

そうじゃなくて 16 ki ページ12

腕の中のAが
ジャケットなしだから体温も直に感じる。

すげー気持ちいい。

俺の上着を取られるのが嫌だったとか言われて胸がギューってなる。



嬉しいけど。

ものすごく嬉しいけど。

「…お願いだからもうこんな危ないことしないで」

俺の為に危険な事しないで。
怪我しないで。



ただそれだけだった。



もしかしたら「何でですか？」くらいAは言うかなって思ったけど

「…はい」

今日は素直に聞いてくれた。



良かった。

抱き締めていた手を解いて目が合う。

この距離なのも
お願いを素直に聞いてくれたのも嬉しくて笑う。



すると俺の顔を見たAがポロポロ泣き出した。



…そっか。

俺全然笑ってないんだっけ。




「もー、泣くなよー」

涙を指で拭きながら言うと

「だって北山さんがやっと笑ってくれたから」

そう言ってさらに泣き出すA。



…やめろよA。

そんなこと言うなよ。
勘違いしちゃうじゃん。

俺のこと好きなの？って思っちゃうから。



Aは俺と違って単に俺が怒ってなくて良かったってだけだろ？



でも俺の笑った顔見れて嬉しいって思われたことが嬉しくて結局また笑っちゃう。




…もうさー。

誰かが張ってるとか
スクープ狙われてるとか
どーでも良くね？



「…今日さ、夜予定ある？」

「ないです」

鼻をすすりながら答えるA。
その仕草すら可愛くてまた抱き締めたくなる。



「もーいいじゃん。久しぶりにゆっくり一緒に過ごさねぇ？」

「……え？」

何言ってるんですか？って顔をするAが愛しい。

「もうさ、俺たちちゃんと会った方がいいよ」

「…ほぼ毎日会ってますよ」

キョトンとしたままのA。



違うって。
ただ会ってるなら確かにほぼ毎日なんだけど。



「そうじゃなくて」

最近の距離じゃなくて。



「前みたいにさ。時間気にしないで少しゆっくりしよ」

一緒にお笑い見たり。
なんなら泊まったり。

出来るなら
もし出来るなら一緒の布団入ったり。



とにかく前みたいな過ごし方したい。



「でも…」

Aはカメラを気にしてるんだろう。
困った顔してる。



けど、ダメって即答しないとこを見ると
もしかして少しは同じ気持ちになってる？



「いいよ、もう。Aが俺の笑った顔足りてないのと一緒で俺もA不足がもう限界なの」



そう言うとAは少し迷った後で

「はい」

って答えてくれた。



それが少しだけ嬉しそうに見えるのは
俺の気のせい？

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