サイボーグな彼女 2

一心同体 29 ki ページ42

DVDを見てると昔の俺の演技が懐かしくて恥ずかしい。
でも当時こんな感じだったか。

この時の演技、今ならこうするな。
なんて考えながら見てて気がついたらコーヒーがある。

「あ、さんきゅ」

いつの間に？確かに欲しかった。
さすがAだな。

「いいえ」

PCから少しだけAの目が見える。



コーヒーと言えば。

「この前さー、コーヒー掛けられたの？」

つい気になって聞くとPCを打つ手を止めて俺を見るA。
驚いてる目をしてる。



「あー、山本さんから聞いた」

俺が言うと、あぁ何だ、って目をしてる。

「ゴメンな、そんなタイミングで俺も連絡してないし。最悪な1日になったよな」

「いえ、大丈夫です」

またPCを打ちはじめるA。



まだ突っ込んで聞いてみていいかな。

「…コーヒーどうした？」

「自分で掛かっちゃっただけなので何ともないです」

PCの手を止めずにAは言う。

「いやホントは違うんじゃねーの？」

俺が聞くと、またAはPCを打つ手を止めた。
少し考えてるように見える。



「ぶつかって掛かっちゃっただけです」

結局言わずにまた打ち始めるA。

「…そか」

そう言われちゃうと聞けないな。



でもやっぱり気になる。

「…俺らのせいじゃねーの？」

今度は手を止めずに言う。

「関係ないと思います」

「何で」

つい冷たい聞き方をしちゃう。

「人にぶつかっちゃうのにただの偶然以外に理由ないですよね」

ぐうの音も出ない言い方のA。
取り付く島もない。



「…なんかさ、辛いことあったら言ってよ」

でも食いついてみた。

「辛いことですか？」

「そー。嫌なこととかしんどいことあったら言ってよ」

「何でですか？」

Aが言う。



全く悪気はないだろう。

真っ直ぐな目で。
本当に俺が言ってるのが何故か分からないって顔をしてる。



「…え」

ものすごくショックだった。

何だ。
距離縮んだと思ったのは俺だけか。



「あ、ほら、例えばコーヒー掛かって嫌な思いした、とか、俺が連絡寄越さなくてムカついたとかさ。気持ちを共有出来たらな、って」

とりあえずフォローしたけどショックが隠せなかった。

でもAも申し訳ないって顔をしてる。

ただ、Aは俺と同じ気持ちで悲しいわけじゃなくて俺の気持ちがわからなくて悲しい顔をしてるんだ。

結局俺のせいでこんな顔になってる。



「トイレ借りるな」



俺はDVDを止めて立ち上がった。

Aに悪気がないのが余計辛い。

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