サイボーグな彼女 2

一心同体 29 ページ41

ご飯を食べてから洗濯物を干したり溜まった郵便を整理してる間、真剣にDVDを見てる北山さん。

顔が仕事モードだった。


邪魔しないようにそっとコーヒーを置くとまた離れて私は経費の伝票処理をする。



「あ、さんきゅ」

しばらくして北山さんが言う。

「いいえ」

ノートPCから少し目を上げて私も返す。




「この前さー、コーヒー掛けられたの？」

またしばらくして北山さんが言う。

…何でそれを知ってるんだろう？
私は手を止めて北山さんを見る。



「あー、山本さんから聞いた」

ポリポリと頭をかきながらいう北山さん。

「ゴメンな、そんなタイミングで俺も連絡してないし。最悪な1日になったよな」

「いえ、大丈夫です」

それと北山さんが連絡しなかったことって関係ないから気にしなくていいのに。
私はまたPCを打ち始める。



「…コーヒーどうした？」

まだ聞いてくる北山さん。

「自分で掛かっちゃっただけなので何ともないです」

「いやホントは違うんじゃねーの？」

さらに北山さんが聞いてくる。



あなた達のマネージャーになったから
仕事をズルできなくて嫌がらせされたんです、って言われても北山さんだって困るだけだ。



「ぶつかって掛かっちゃっただけです」

間違ってはない。
ただ彼女がわざとぶつかってきただけだ。

「…そか」

またDVDを見始める北山さん。



「…俺らのせいじゃねーの？」

しばらくしてまた聞く北山さん。
何が言いたいんだろう？

「関係ないと思います」

「何で」

逆に何で関係あると疑ってるのだろうか。

「人にぶつかっちゃうのにただの偶然以外に理由ないですよね」

私が言うとようやく黙る北山さん。



「…なんかさ、辛いことあったら言ってよ」

またしばらくすると北山さんは言う。

「辛いことですか？」

「そー。嫌なこととかしんどいことあったら言ってよ」

「何でですか？」

つい普通に聞いてしまったら、

「…え」

北山さんがものすごく悲しい顔をした。



…あれ？



「あ、ほら、例えばコーヒー掛かって嫌な思いした、とか、俺が連絡寄越さなくてムカついたとかさ。気持ちを共有出来たらな、って」

慌てて北山さんが言ってるけど悲しそうなままだった。



何でだろう。
何がダメだったんだろう。


これが山本さんが言う「キスマイも困ってないか？」ってやつなのかな。



「トイレ借りるな」



北山さんはDVDを止めて立ち上がった。


私はそんな北山さんの背中を見送ることしか出来なかった。

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