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目が覚めたのはお昼頃。
お昼寝にしてはよく眠りすぎた。
無断欠席による友人、学校からの通知は全て無視した。
『おう、起きたかクソガキ』
「起きましたよ。おはようございます。」
凌さんは部屋でアコースティックギターを弄っていた。
『家主より爆睡なんて大したもんだな。』
「えぇ、おかげさまで。」
『ほれ。1曲どうぞ。』
差し出されたギター。
持ち慣れない他人のモノ。
指で少し撫でてみる。
流石はプロのミュージシャン。
チューニングに1ミリもズレがない。基礎だから当たり前だけど。
「寝起きなのに...なんの無茶ぶりですか。」
『お前がホントに良い奴かオーディション。』
よく意味は分からないが、
早くと催促され、誰もがよく知る曲を弾いた。
それを凌さんは黙って聴いていた。
まるで演奏している私の方が惹き込まれてしまいそうな眼差しが終始辛かった。
「...どうですか。」
『ギターだけじゃなく、どの楽器もそうなんだけど、』
感想は言ってくれないんだ。
...説教??
『楽器っつーのは、弾き手の分身なんだよ。クセも好みも全てコイツが物語ってる。性格も出る。』
「...はい。」
『お前は優しい奴だ。タッチも随分軽い。でも軸はある。ロックにしては緩すぎるが、バラードにしては強すぎる。今のAは自分の軸に合ってない。』
「それは、どういう事ですか?」
『お前、今不安定だろ。ブレてんだよ、色々と。』
「...下手って事ですか?」
『まぁ、それも味と取れば俺は嫌いじゃない。』
褒められてるのか貶されているのか、あまりよく分からない。それでも、たった1曲のこの数分で全てを見透かされているようで少し怖かった。
『あと、ビビるくらいFヘッタクソだな』
「苦手なんです、昔から」
私の苦手に対して滅茶苦茶に笑う凌さんは、
どこか懐かしい父親の匂いがした。
「で、オーディション結果はどうなんですか?」
『あー、わかんねぇや。』
無責任というか、投げやりというか。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時