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音楽系の専門学校に通う私の専攻はギター。
昔ミュージシャンだった父が教えてくれたギターをやりたくて入ったものの、プロを目指す人達の中で弾くのはあまりにもつまらなくて。
ミュージシャンになりたい訳でもないし、卒業したらきっと普通に就職するのに、趣味のためにわざわざ奨学金借りて学校に入るほど余裕もないくせに。
出された課題の譜面の通りに鳴らしているだけ。
実につまらん。
創作の授業は少し楽しいけれど、
在り来りな曲ばかりが出来上がるし、刺激もなければ響く音も奏でられない。
そして、コレは誰の為?
私の為なら要らない。
私が欲しかった音楽じゃない。
私が欲しかったのは懐かしい親の温もり。
私が高校生の頃に交通事故で呆気なく死んでしまった両親を少しでも感じていたいから。
父は私にギターを弾いてくれた。
上手く弦を押さえられなくて
響かない私の音にいつも笑っていた。
未だにFコードが難しいよ。
母は私に綺麗な透き通った声で歌ってくれた。
一緒に歌いたいのに音程を外してばかりの私の声を良いアレンジだねって褒めてくれた。
父のギターに合わせて歌う母の声は私史上最も痺れた音楽だった。
どうすればあの感覚が蘇るのか。
必死に追い求めてきたけど、
全くかすりもしなくて。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時