40 ページ40
凌さんの家からの帰り道。
随分長居してしまったと少し申し訳なくなる。
「よっ。」
「修司...いつからいたの?」
「まぁ、さっき。」
「連絡くれれば良かったのに」
修司はいつもそう。
連絡さえくれればすぐに戻るのに、こうやっていつまでも私帰りを待っている。
特に躊躇う理由もなく招き入れると、なんだか遠慮している様子。
「彼氏でもないのに、勝手に来てごめんな。」
「いいよ、別に。」
なんだか少し気まずい雰囲気。
前の事があるせいか、会話はぎこちなくなる。
「凌さんとこ?」
「うん。」
「この前の事だけどさ...」
「あのさ、修司。その...ごめん。今は誰かと付き合うとか、そんな感じじゃなくてさ。やりたい事があって。」
「うん。そっか。」
「ほんと、ごめん。」
「いや、いいんだ。また自分勝手なことしてAを困らせてたかなって思ってたし。その、やりたいことって?」
「ちゃんと音楽しようと思って。」
「そうか、良かった。応援するよ。」
微笑む修司に懐かしい感覚が蘇る。
2人でギターを担いで歌ったあの頃、凄く楽しかった。
「親父さん、喜ぶんじゃない?」
「そうかな。そうだといいな。」
「あ...。ごめん、黙ってたけど、知ってた。」
「え?」
「さすがにテツヤさんの事は知ってた。でも、Aがなんか隠してる感じだったから。」
驚いた。めちゃくちゃ驚いた。
まぁ、でもそりゃ付き合ってた頃によく家に遊びに来てたしさすがに分かるか。
修司が1歩大人だったというところ。
「なんだ...。言ってよ。隠してたのがバカみたい。」
「そりゃ確信するまではめちゃくちゃ気になって聞きたかったけどね。でも、親が誰だって関係無いし、俺はAと一緒に居たかっただけだし。」
"親が誰だって関係無い"
修司はお父さんのことを知っていても、私を私として見てくれていた。
刹那、胸が苦しくなる。
「私、修司といたら幸せになれるかもしれない」
「おい、振ったくせにすぐ寝返ってんじゃねぇよ。笑」
「修司だって、私を振ったくせに」
「それ言われちゃなんも返せねぇよ。やりたいことあんだろ?それに熱中しろよ。」
ぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫で回す彼はきっと1番の理解者なのかもしれない。
そう、思った。
31人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時