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『これ....!!テツヤモデルの限定ものじゃん...』
「ホンモノです。」
『え?』
「コレが私の父の形見だと思ってます。今練習している楽曲は、父の無限財産だと思ってます。」
『...。まって...追いつけねぇ』
「いくらでも親を自慢出来たけど、大好きな両親は私の目標だったので。自信が無いから比べられるのが怖くて今まで誰にも言いませんでした。」
『ちょっと突然過ぎてビビってんだけどさ。』
未だ目を大きく見開いたままの凌さん。
こんな出来損ないが凌さんの憧れの人の娘だなんて。
そりゃ信じ難いか。
「それを知って、凌さんは私をどう思いますか?見る目、変わりますか?」
勝手に暴露して、勝手に自分で聞いたくせに、その答えが少し怖くて。
『いや、何も変わんない。AはAだろ。』
当たり前のようにそう答えた凌さんの言葉が胸に突き刺さる。
まだ驚きでこの状況がこんがらがった様子だが、伝えたかった重要な事は分かったらしい。
「安心した。凌さんに話してよかったです。」
『辛いか?この曲やるの。』
「正直辛いです。」
『そうか。』
やりたくない、やらされるくらいなら辞めちまえ。
やりたくないなら無理にやる必要はない。
凌さんはそう言った。
「凌さん。」
『ん?』
「教えてください。Anonymous。」
「逃げていい時もあるんだぞ。』
「もう今まで散々逃げてきました。だからこれからはちゃんと向き合いたい。」
『そうか。』
そういうと凌さんは珍しく自分のギターを担いだ。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時