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かつて愛おしいと思えた彼の全てに、
今は恐怖と罪悪感しかない。
修司「お前のこの身体も、この顔も、この顔も全部、今までどこの、誰に見せてきたんだよ」
あなたのその表情は
今どんな感情なの...。
こんなのは抱かれてるんじゃない。襲われている。
それでも彼が織り成すこの快楽から抜け出せず、拒否する事も出来ない。
違う、拒否しない。
修司の気持ちもよく分からないままに、彼の胸に抱かれて眠った。
朝起きれば、もちろん隣には修司がいる。
スヤスヤと寝息をたてるその顔はあの頃の愛くるしいままだった。
スマホを見ると、凌さんからの通知があった。
ただの仕事の話。
もしかするとまだ修司に気持ちがあるかもしれないと思った私は、凌さんに対して少し気があった事にまた罪悪感を感じた。
凌さんは私の事どうも思っていないのだから、そんなの感じる必要もないのに。
修司「おはよ」
「あ、おはよう」
何事もなかったように振る舞う修司。
シャワー浴びるわ。と何も気にすることのない彼の態度に、まだ恋人であるような錯覚。
〜♪
このタイミングで着信が入る私のスマホ。凌さんからだ。
「もしもし」
『おう。メール見た?』
「はい。」
メールには
"俺の機材が足りなかった。どっか混じったかも。分かるか?"
と来ていた。
『違う奴の方にいってたみたい。見つかったから大丈夫。』
「そうですか。良かったです。ごめんなさい、私のミスです。」
『いや、いいよ。今回は特別に許してやろう』
「珍しい。ありがとうございます。」
『お前さー、今日なんかある?』
「今日ですかー?」
『スタジオ行くけど、行くか?』
「あぁ、それなら...」
バスルームからドアの音。
特に予定も無いが、今日は凌さんに合わせる顔がない。
『ん?』
「今日ちょっと用事が」
『そうか。』
「すいません。」
切れた電話が少し切ない。
修司「電話?」
「うん。」
ベランダに出て2人で煙草を吸った。
高校1年の頃に付き合って、3年後に別れた。
その頃はお酒も煙草もしていなかった。
こうして2人で一服するのも初めての事。
修司「初めてなのに懐かしいな。」
「そうだね。」
修司「Aが煙草吸うの想像つかなかったけど、案外様になってんじゃん」
「なにそれ」
再会してからやっと笑顔を交わした。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時