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"いつか俺が死ぬときは"
精一杯に笑っておくれ
いつかまた会えるなら
もう一度笑っておくれ
私の中でお父さんが生き返った時、自分が凌さんに惚れたのが分かった。
人間性、音楽性、もうそれだけじゃない。彼の全てに惚れていた。
無意識に父親が重ねていた彼は他の誰でもない、凌さんだ。
父親が死んでから初めて感じたこの気持ちと、元彼以来の強い想い。
ステージからほんの一瞬、
凌さんが袖の私を見て笑った。
今まで見た事のない表情。
キラキラしていて、カッコよすぎて、眩しかった。
気持ちに気付いてしまったが為に、胸は強く締め付けられた。
全曲、アンコールも終わり、ライブは幕を閉じた。
余韻に浸っている間もなく、バタバタと動き回るスタッフと撤退の準備を進める。
『A。』
「はい。」
『ありがとな。お疲れ様。』
たくさんの人が動く中で私目掛けて走ってくる凌さん。
「お疲れ様でした。」
『俺の音楽、どうだった?』
「なんかとりあえず凄かったです。」
『お前の国語力、相変らすだな』
忙しない雰囲気で落ち着いて話すのもままならない。
打ち上げの話を聞いて、片付ける手を早めた。
凌さんのギターケースを担ぎ、機材車へ向かう途中。
修司「ちょっと。話したいんだけど。」
「ごめん、今忙しいから。」
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時