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ライブの日。
想像していたよりも彼らにファンが多い事に驚いた。
ライブハウスにはお客さんはビッシリ。
スタッフの人も思ってた倍の人数だ。
『お前はここにいればいいから。コレ、リハで狂った。チューニングしといて。こっちは終わってる。焦らないでいいから。』
「はい。分かりました。」
舞台上手側の袖、ちょっとしたスペースで
慣れない雰囲気に戸惑う私に、凌さんは落ち着くように言った。
私がステージに出るわけじゃない。それなのに何故か猛烈に緊張した。
『今から前に俺に付いてくれてた奴らの前説みたいなんがあるから。ちょっと落ち着け。時間はたっぷりある。』
笑顔で私の無造作に頭に手を置く凌さんはいつもより優しかった。
メンバーに呼ばれ、控室の方へ行ってしまった。
私にとってアウェイなここに置いていかれるのは少し寂しい。
リハで聞いた凌さんの音楽、正直あまり分からなかった。
私にはレベルが高すぎてついていけない。
ただいい曲だとしか言えないくらいに魂抜かれる演奏だった。
あれがリハーサルなら、本番はどんな音になるんだ。
そんな事考えていると、
先に演奏するバンドのメンバーが袖に入ってきた。
後輩バンド「おはようございます。よろしくお願いします。」
「おはようございます。」
周りのスタッフに挨拶する彼らに小声で返した。
1人の男性に声をかけられた。
「凌さんに付いてる方ですか??」
「はい。そうです。」
「僕も少し前まで付かせてもらってたんです。大丈夫ですか?なんか嫌な事言われたりしてません??笑」
「まぁ...とりあえずは」
「凌さん、口悪いし乱暴だけど、ああ見えて実はめっちゃ繊細だし、優しい人なんです。真っ向から向ってくれますしね!僕達、いい人に恵まれてますね。凌さんをよろしくお願いしますね!」
「ありがとうございます!ステージ頑張ってください!」
キラキラした笑顔の彼はとてもステキな人だ。
凌さんの事、ホントに大好きで憧れているんだ。
彼の言うことに共感しつつ、いつの間にか緊張を忘れていると、
その彼の背後から、キツめの視線を感じた。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時