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『また来たか。』
あれから毎日のように通ったが、凌さんはなんやかんやいいつつも、いつも家に入れてくれた。
居心地がいい。それだけ。
存在しない兄が出来たようで、凌さんも私を妹のように扱っていた。
1度は断られたが、私と凌さんの間には自然と師弟関係に似たモノが出来上がっていた。
こうして通うようになり、彼に費やす時間が増えたため、今まで夜に会っていた私に要らない奴らはある程度断捨離した。
『来月の予定って分かる?』
「まぁ、特に何も無いと思いますけど」
『ライブで俺のローディーやってくんね?』
「え、凌さんのですか?」
『そう。』
どうして私を選んだんだろう。
凌さんの役に立てる気しないし、むしろ邪魔になりそうな気がするが。
「私なんかで良いんですか??」
『お前なら気使わなくていいし。気兼ねなく雑用押し付けれる。』
「いや、...は?そんなんで決めたんですか??」
『まぁ。暇だろ?今までボーイやってくれてた奴が辞めちゃってよ。』
「あぁ、愛想つかされたんですね。」
『自分のバンド持ってやってくらしい。俺から卒業したってことな。』
きっとその人は私と同じように彼という人間に惚れて付いていたんだろうな。
無愛想だし、口悪いし意地悪だけど、案外優しくて、音楽に関しては真剣に向き合ってくれるし。きっと憧れの存在なんだろう。
『とりあえず俺のサポートしてくれればいいから。今回はそれだけでいい。』
「...今回は??」
『急に色々やらせて滅茶苦茶にされても困るしな。』
また馬鹿にするように笑う。
この言い回し、新しく付いてくれる人が出るまで私が付き人させられるんだろうか。
ただ、凌さんの音楽はあまり聞いた事がない。
バンドの話もちょこっとだけ。興味深いものではある。
珍しく彼が私に私情に付き合わせてきたようで、少しだけ嬉しかった。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時