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お前の国語力さえ疑うわなんていいながらキッチンへ向かう彼を追いかけた。
『ココア入れてやっから。あっちで大人しく待ってろ。』
「ここで見てます。」
『企業秘密だっつっただろ。』
ごく普通のココアに、少しのブランデーとママレード。
コレが彼の言う秘密らしい。
オレンジの風味はママレードだったんだ。
「へぇ、どこで覚えたんですか」
『秘密。誰にも言うなよ。』
「なんでそんなに隠したがるんです?」
『美味いもんは独り占めしたいだろ』
そう言ってマグカップを2つ並べた。
独り占めしたいと言いながらも私にはすんなり教えてくれた。
「やったぁ。ありがとうございます。」
あちぃあちぃとマグカップに息を掛ける凌さんは何だかとっても可愛い。
『久しぶりに飲むとやっぱうめぇな。』
「秘密にするくらい好きなのに普段飲まないんですか?」
『甘いのはあんまり好きじゃない。』
あまりものんびりしすぎてしまったせいで、初めて来た部屋にも落ち着きを感じる。
「そろそろ帰ります。学校行かなきゃ。」
『学校行くには遅すぎねぇか』
「顔出すだけでいいんです。授業楽しくないんで。」
『だから下手くそなんだ。』
「違います。才能です。」
特に手荷物も無いまま、玄関まで見送ってくれる凌さんに頭を下げた。
「また来てもいいですか?」
『ダメ。』
「じゃあ、また明日来ますね。お邪魔しました。」
『おう。早く日本語学校行ってこい。』
思ったより親睦が深まる事に少し違和感を感じた。
年齢も違うし、お互いの素性もまだよく知らない。
ただ、何となく落ち着く彼の雰囲気に、恋愛とは違う意味で惚れた。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時