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「…」
そっと離れた松本は、今まで間近でみたなかで、
一番妖艶な気がした。
「いきなりごめん。
…会いに来てくれて、ほんと嬉しくて」
また、腕のなかに連れ戻される。
俺も、おずおずと背中に手を回し、抱きしめかえす。
もやもやが消える。
消えていく。
…ん？
でも。
ん？？？
あれ？俺って、そっち側ぽい？この展開。
…でもまあ、幸せに変わりはない。
「なぁ」
「ん？」
「お互い、仕事は大事だけど、さ。」
「うん」
「これからも、よろしく、な。」
「…っ」
体に回されたままの腕に、さらに力が加わる。
「こちらこそ！！！」
まあ、甘い雰囲気を味わっていたいけれどそうもいかず。
長居してるわけにもいかない部外者な俺。
「そろそろ行くわ」
持参したおにぎりを、せっかくだからと食べ始めた彼を見ながら、そう切り出した。
「うん…。また、ちゃんと連絡する。」
「無理しない程度に頑張って。ま、今こっちはぼちぼちだから。」
「ううん、連絡したいから連絡する」
「おぉ」
「今度は、うち来てよ」
…やっぱこれは、そういうあれなのか？
お宅訪問はうれしいし、連絡貰えるのも会うのもそりゃもう勿論うれしいんだけど。
「おお。…うん」
はにかんで、それだけ伝えることしかできなかった。
「え、なに。そんな顔されるとたまんなくなるんで、」
立ち上がって、俺の手をとり、
甲に口づけ。
「おにぎり食べるの、もっと後にすれば良かった」
なんなんだ。
こいつほんと日本人か。
頭がぐるぐる、くらくらしてきた。
「あ、うん、もう、うん俺行くわ。
さ、撮影頑張ってな」
「ありがと」
もうほとんど逃げるように楽屋をでた。
「あ！櫻井さんおにぎりありがとうございました！」
顔を知ってるスタッフに声をかけられる。
「あ、お疲れさま。うん、食べてくださいねー。」
「なんか、あれ？いそいでます？」
「あ、うん。次の予定あるのちょっと失念してて！」
「さすが予定詰め詰めの櫻井さん！また！いつでも遊びに来てくださいね！」
そういって、会釈していってしまった。
ごめん、ここにはどうやら魔性のものがいるから、もう現場お邪魔ないわ…
ふらふらしながら、家路についたのだった…。
おしまい。
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作者名：果穂 | 作成日時：2018年3月18日 17時
