面接と二番星 ページ8
「ここに割り印押して」
事務所でミヤコさんが重なった書類の上を指差す。
「わりいん?」
『判子押して下さいってこと』
「へぇ〜・・・よくわかんないけど、ここに押せばいいんだ」
ルビーが判子を押すと、星野、と紅いインクが綺麗に写った。
これでルビーは私たちと同じ苺プロ所属タレントだ。何年も前だし、今の私が所属になっているかは分からないけど。
満足気なルビーに「何かしたら訴訟するからね」と軽く脅すミヤコさん。
脅し方・・・まぁ冗談じゃなさそうだけど。
書類を嬉しそうに見つめるルビーに、やっぱり苺プロに入りたかったんだろうなと再度思った。
「芸能科入るために必要な手続きでもあるから、怒らないでよ、アクア」
『怒らないでしょ、流石に。アクアが信頼出来る事務所なんて、ミヤコさんがやってる苺プロくらいしかないって』
「・・・別に反対してない」
不機嫌そうに言うアクアに少し笑いが込み上げた。
ルビーが苺プロに入ってから数週間経ち、陽東高校・・・私達が受ける高校の入試の日がやってきた。
陽東高校は中高一貫校で、日本でも数少ない芸能科のある学校だ。この芸能科は誰でも受けられるというわけではなく、芸能事務所に所属している証明書が必要になる。
私はルビーと同じ芸能科だ。
『・・・苺プロ所属の、星野翡翠です』
「偏差値65?なんで偏差値40のうちを・・・?それも芸能科に」
『校風に惹かれたのもありますが、マネジメントの仕事がしたくて』
「そんなに校風に魅力を?」
嘘は吐いていないぞ。
面接が終わり、廊下に出るとルビーが窓から外の景色を見ていた。
アクアも丁度やってくる。同時に終わったのか。
「どうだった?」
「多分平気。そっちは?」
『私も大丈夫かな』
「問題ない。万一弾かれるとしたら、名前のせいだろうな」
ルビーがおかしそうにアハハっ、と笑った。
「確かに、本名"星野愛久愛海"だもんね。皆面倒くさがって"アクア"って呼ぶけど。お姉ちゃんは"翡翠"だからギリギリ?」
『どうかな。"瑠美衣"の方がまだ居るよ』
その時、私たちの横を通り過ぎた一人の生徒が立ち止まった。そして私とアクアの名前を呟く。
声がした方を見ると、赤毛の女の子が此方を指さした。はて、何処かで見覚えが。
「星野アクアと、星野翡翠!?」
もの凄い剣幕で私たちの名前を呼ぶ女の子に少し引いた。
104人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年1月21日 23時