誰かを支える二番星【推しの子】part２ (ページ3)

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変化と二番星ページ3

ルビーははあ〜とわざとらしく長い溜息をついて、綺麗な顔に笑みを浮かべた。

「分かってないね。お兄ちゃん、お姉ちゃん。私はアイドルになるんだよ？芸能科がある高校は面接重視。学力なんて参考程度。アイドルになれば受験勉強なんてしなくてよくて、一石二鳥〜！」

『アクア、此奴受かると思う？』

「いや全然」

アクアは短い溜息を吐き、ルビーに軽く説教をする。

「豆知識感覚で人生賭けたギャンブルすんな」

「むぅ･･･」

「アイドルを夢見るのは構わんけどさ、アイドルに夢を見るなよ」

アクアの声に、ルビーはむっとした顔でアクアを見た。

「基本薄給だし、30手前で定年だし、日常生活は常にファンの監視が付きまとう。卒業後の業界生存率も低くて、結局他業種に就職する人が殆どで、こんなにコストとリターンが見合ってない仕事もなかなかない」

「だからなんだって言うの？したいことをするのが人生でしょ？コストとかリターンとか言ってたら、何も出来ない！何も出来ないまま終わる人生だってあるんだよ。私はそんなのイヤ！」

「･･･勝手にしろ。監督のところ行ってくる」

『･･･今回はどっちも言い過ぎだよ』

玄関の扉が閉まる音を聴きながらそう言った。

アクアは、アイが死んでからガラリと変わった。ずっと目に暗い陰を落としていて、何かを抱え込んでいるように見える。
あの監督に弟子入りして何かをしているみたいだけど、私どころかルビーにも教える気配は無い。

変わってしまったのはアクアだけではない。苺プロの前社長、斎藤壱護は、あの事件の後姿を眩ませ、ミヤコさんがあとを引き継ぎ社長となった。

アイというスターを失ったB小町は、アイが死んでから二年後に解散。今の苺プロにアイドル部門はなく、ネットタレントのマネジメントに手を広げて運営は成り立っている。

「ねぇ、またアイドルグループやらないの？」

事務所のソファに座り、カップケーキを食べながらルビーが仕事をしているミヤコさんに聞いた。

「簡単に言わないで。･･･私だって、やれるならやりたいわよ」

ミヤコさんは手を止めて椅子の背もたれに寄りかかる。

「アイの見せてくれた夢は、なかなか忘れられる体験じゃない。でもあれは、宝くじに当たったようなものと考えなきゃ。

この仕事を長くやればやるほど分かる。あんな奇跡は二度も起きない。現実はあんなにとんとん拍子にいかない」

確かに、アイという存在はこれまでに無い程大きかった。