打ち上げパーティーと二番星 ページ18
アクアの頬の処置をしようとしていると、鳴嶋メルトが近付いてきた。
「悪い、拳当たったよな。力っちまって」
「謝らなくていいよ。わざと当たりに行っただけだから」
えっ、と驚く鳴嶋メルトに、アクアは微笑しながら言う。
「やっぱ、演技は感情乗ってなんぼだよな。いい芝居だったよ。お陰で有馬も、本気出せたんじゃないか？」
去り際にアクアが言う。本気を出した有馬先輩の演技は凄かった。昔見たあの演技より何倍も凄くなっていた。天才は何処まで行ってもやっぱり天才だ。
最後のシーンもちゃんと本気の演技でやれていて、有馬先輩は何処と無く嬉しそうだった。
最終回が放送されると、リタイアしていない一部の原作ファンや役者のファンのみが好評を告げ、狭い界隈でひっそりと熱烈な称賛を受けていた。
最終回が放送されるとドラマの打ち上げパーティーに呼ばれ、私とアクアは会場に訪れていた。
「あぁ、あの俳優も出てたのか」
『･･･こうやって見ると、改めて沢山の人間が関わってたんだって思うね』
「そうだな」
私達の言葉に、隣に居た有馬先輩が「そうよ」と言う。
「私達の演技には、多くの人の仕事が乗っかっている。結果を出さなきゃいけないし、スキャンダルなんて以ての外。･･･ちなみに、あんた彼女とかいるの？」
「いないからスキャンダルもクソもない」
有馬先輩はそう、と言ったあと、意味ありげな顔でアクアを見つめた。
「批判が来るとすれば妹である私かルビーにだろうね」と私が言えば、ルビーを思い出したのか少し苦い顔をする。仲良くできないものかな･･･
「撮影お疲れ様でした」
大人の女性の声がしてそちらに顔を向ける。メガネをかけた女の人がいて、有馬先輩が「先生」と呼んだので漫画の原作者だ、と気付いた。
「･･･この作品は、有馬さんの演技に支えられていたと思います。ありがとうございました」
先生が頭を下げる。しっかりした人だ、と思った。嫌味を言うわけでもなく、相手への感謝を忘れない。いい人。
ぼーっとしていると、なぁ、と話しかけられた。顔を上げると鳴嶋メルトが目の前に居た。
『･･･どうかした？』
「えっと･･･翡翠ちゃん、だよな」
『うん』
鳴嶋メルトは口をモゴモゴさせた後に1枚の紙を渡してきた。なんだこれ。
私がそれを受け取ると「いつでも連絡してきていいから」と言って去って行った。なんなんだ彼奴。
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作者名：Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ：http
作成日時：2024年1月21日 23時
