悪態度と二番星 ページ15
アクアの撮影当日。曇天の下、ドラマの撮影準備が始まっていた。
私はマネージャーとしてアクアと一緒に撮影現場に来ることになった。マネージャーと言っても、練習みたいなもの。本業はルビーのグループのマネだけど、それでもその時に仕事に慣れていないと使えない。
口頭で説明されるより実際に体験した方が早いだろうということでミヤコさんが進めてくれた。有難いと思う。
「ドラマってのは、部屋の中で主演級が本読みやリハーサルをして、それを元に監督やDがコンテを切る。撮影現場でドライやカメリハ、ランスルーを踏んでから本番ってのが一般的だけど、このロケ地は1日しか確保できなかったらしいからドライからランスルーは全部まとめてリハーサル扱い。練習は1回きりよ」
「雑だなぁ。うちの監督でももうちょい丁寧だぞ」
『通りで大根・・・』
「予算も時間もないのよ」
有馬先輩はお手上げのポーズのように両手をあげて言った。
ちなみに私がマネとして来ることを許可して監督に話をつけてくれたのも有馬先輩だ。一応後輩の面倒見も良い。成長を感じる。
「よう、かなちゃん」
何処かで聞いた声がしてそっちを向く。
一人の男性役者が此方に近付いて来ていた。
「今日は雨ヤバない?撮影延期にして欲しかったわ」
「ちょっと雨漏りしてる所あるみたいだけど、平気よ」
「湿気あるとさぁ、髪広がるんだよね〜なんかここじめじめしてて不快だし」
・・・JKか。喋り方が鼻につく。苦手な人間の上位に上がってきている気配がして頭を振った。今はダメだ。仕事に影響出る。
「あ、紹介するね。こっちの人は、今日のストーカー役の・・・」
「アクアです。よろしくおねが、」
「よろ〜」
男性役者は最後まで聞くことなくアクアと有馬先輩の横を通り過ぎていく。なんだ彼奴・・・
「・・・態度悪くね?名前も聞けてないんだけど」
アクアが眉をひそめて言う。私もそれには同感だ。礼儀ってものを知らないのか。そんなんじゃいつか仕事貰えなくなるぞ。
有馬先輩によると、名前は鳴嶋メルト。トントン拍子に売れてる子にはよくあること、らしい。経験談か・・・
「某アイドル事務所とかは教育かなりしっかりしてるから、礼儀正しいし、現場の好感度も高くてハズレがなかったりする。たくさん使われるには、それなりの理由があるのよね」
演技が上手くても、礼儀がなってないやつはいつでも切り捨てられる。
・・・まぁ、それは芸能界じゃなくともそうか。
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作者名:Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年1月21日 23時