受諾と二番星 ページ12
ふと、アクアが反応する。
「今日あま?」
「うん。知ってる?」
「いや、演出齧ってる人間で知らねぇヤツモグリだろ。ド名作じゃねぇか。翡翠は嫌いみたいだけど」
『嫌いってわけじゃない。好みじゃないだけ』
「其れを嫌いって言うんだよ」
『苦手って言って欲しいね』
そう言いながら水を一口飲む。
有馬先輩が嬉々としてアクアに近付き、興味ある?と聞いていた。演技を見るチャンスだと思ったのだろう。
だがアクアも頑なに演技はやらないと言い張り続ける。頑固で面倒な性格だな。
本当はやりたい癖に・・・
アイは、アクアは役者になるかもみたいな事を最期に言っていた。それが少し引っかかっているのだろうと思う。
だって、役者を諦めているのならこの業界にしがみつく理由なんかない筈だし。
「掛け合ったら、案外サクッと決まっちゃうかもよ〜?Pの鏑木さんには可愛がられてるから、私」
「・・・鏑木?」
アクアが反応した。
薄い反応だが、この声色は興味が出てきている声だ。15年も一緒にいればだいたいわかる。
「フルネームは鏑木勝也?」
「そうだけど・・・ねぇ、やろうよ。キャストも同年代ばっかだし、相手の男も、女の子みたいな顔しててさ〜。可愛いんだよ?」
「やる」
「えっ?」
『タイミング最悪じゃん・・・』
有馬先輩が言葉を切るタイミングが最悪だ。アクアは男色家だとでも思われたいのか。話聞いてなかっただけだろうけど。
案の定勘違いされていた。可哀想に。有馬先輩もすぐ忘れるだろうけど。
「アクアの演技楽しみ。・・・あぁ、ただ、多少問題のある現場だから、覚悟はしてね」
・・・問題めっちゃありそうだな・・・
帰宅し、アクアがドラマに出る、とルビーに報告すると、ルビーはたいそう驚いた顔をした。アクアが恨めしそうにこっちを見る。
「なんで言うんだよ」
「だって貴方、自分からは言わないでしょ。所属タレントの広報活動は事務所の仕事よ」
『それに、兄の晴れ舞台は見せた方がよくない?』
私とミヤコさんが口々に言うとアクアは黙り込む。そうやって従順にしてれば少しは楽なのにな。
「ママ、言ってたもんね。私は将来アイドルで、アクアと翡翠は将来役者さんかなって。翡翠はマネージャーになっちゃったけど。・・・あの言葉、忘れてなかったんだね」
嬉しそうな声で、ルビーは言った。
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作者名:Wolf @ 元フェアリー | 作者ホームページ:http
作成日時:2024年1月21日 23時