43、その異能で終止符を ページ43
××
「おい手前。どうやって此処まで来た」
「ある方に教えて頂きまして……」
中也先輩に詰め寄られ、曖昧に誤魔化す。
A先輩の名前を云ったらきっと彼に迷惑がかかるだろうからA先輩の名は絶対に出さずに乗り切らなければ。
「……マフィア内部に内通者がいるってことか?」
「いえ違うのです。そういうのではなくて……えっと、その……」
目で太宰先輩に助けを訴えると彼はやれやれと溜め息を一つ零す。そして私の前に立った。
「負け犬中也は内股歩きで尻尾巻いてどっか行き給え」
「手前、マジで死ね」
「うっわー、負け犬がなんか云ってるー!これこそ正に負け犬の遠吠えだね。なかなか見れない光景だからAちゃん目に焼きつけておくように」
太宰先輩は凄まじい悪口を中也先輩に吹っ掛けると「蛞蝓と同じ空気吸うのも最悪だからこれで行くね」と一足先に出ていく。私を置いて。私を置いて。
中也先輩は盛大な舌打ちをし、私に目を向けた。
「手前の異能は本当に "魅了" なのか?
芥川から聞いた話だと"羅生門"を弱体化させたって……」
「……えぇ……はい……」
嘘を吐いても何の意味もないので素直に頷く。
刹那、中也先輩の纏う雰囲気がスイッチを切り替えたように
「ならお手並み拝見ってとこだなァ……!!」
瞬きをする間もなく、中也先輩の
「くっ……!」
ゆっくり、ゆっくりと中也先輩の身体は地面にめり込んでいく。私だ。間違いなく、私の異能が原因だ。
「や、やめてください!」
思わず悲鳴に近い叫び声を上げると、歪んでいたはずの地面が瞬時に元に戻った。中也先輩は息を切らしながら「反則だろ、ンな異能……」と拳を握り締める。
「すみません。お怪我は……ありますよね」
「……はぁ……手前、何で止めた?
手前が止めさえしなかったら俺はあのまま死んでたぜ。俺が死んだ方が手前ら探偵社にとっては好都合だろ───おい、手前、聞いてねぇよな……」
先輩の話を半分ほど聞き流し、私は中也先輩の真っ黒な帽子に釘付けとなっていた。
矢っ張り、なんだかとても懐かしい。
そっと手を伸ばす。先輩が抵抗しないのを良いことに私は彼の帽子を被ってみた。
**
44、ここはやわらかい行き止まり→←42、包帯男と素敵帽子と元女子高生
3766人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ